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菅家さん「事件が、家族も、人生もばらばらにした」

2009年6月6日19時22分

 「足利事件」の再審請求で、4日に17年半ぶりに釈放された菅家利和(すがや・としかず)さん(62)が5日、朝日新聞のインタビューに応じた。自らの有罪を確定させた裁判所に対して「証拠が間違っていることを分かってくれるのでは、と思ったが全然だめでした。残念だし、当時の裁判官に怒っている」と語った。

 菅家さんは、取り調べを受けた刑事に怒鳴られ、訳も分からず犯行を「自白」したという。しかし、一審・宇都宮地裁、二審・東京高裁とも、その内容は「信用できる」と判断した。当時のDNA型鑑定結果に疑問を持った弁護団も97年から再鑑定を求め続けたが、上告審の最高裁も、再審請求審の宇都宮地裁も再鑑定を実施しなかった。

 「自分の人生は終わった」と絶望しながら、支援者の励ましで「頑張ろう」と思い直す日々を過ごしたという。

 再審請求の即時抗告審で東京高裁が再鑑定を認めたことで、ようやく釈放につながった。再審では「当時の警察官、検察官に謝ってもらいたい。間違っても全然平気なのは、弱い者いじめで、正義でも何でもない」と訴えるつもりだという。

 父親は逮捕後まもなく亡くなり、無実を信じていた母親も2年前に亡くなった。逮捕前々日の91年11月30日に栃木県足利市の実家で一緒に過ごしたのが最後となった。「亡くなったと聞かされ、本当に胸が詰まった。事件が、家族も、自分の人生もばらばらにした」

 この日菅家さんは、死刑判決を受けた後に再審で無罪が確定した免田栄さん(83)と再会した。会うのは約12年ぶりという。免田さんから「お互いに笑顔で(この日を)迎えられて良かった」と声をかけられ、菅家さんは固く握手を交わした。(河原田慎一)

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