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親の暴言、子の発達を阻害 言語性知能が低い傾向

2009年6月6日22時6分

 感受性の高い幼少期に親から言葉による虐待を受け続けた人は、受けていない人より「言語性知能」の数値が低い傾向にある――。そんな研究結果を熊本大学大学院の友田明美准教授(小児発達社会学)が米ハーバード大と共同でまとめた。友田准教授は、19〜20日に熊本市である日本小児救急医学会で報告する。

 研究は18〜25歳の米国人1455人から、家庭環境や家族の収入などの社会経済環境が同程度の男女40人を選び、4〜17歳の幼少期に親から連日「生きている価値がない」「死んだ方がまし」などと言われ続けた21人と、言われなかった19人に分けて、知能検査と磁気共鳴断層撮影(MRI)検査をした。

 その結果、言語性知能の数値は、言葉の虐待を受けなかった人が111〜154だったのに対し、虐待を受けた人は94〜140と低かった。虐待された人の脳は、言語で意思を疎通する部分の血管が膨らむなどの損傷があったという。

 友田准教授は「言葉の暴力が脳の発達を阻害する可能性を示すデータ」と分析。今後は、日本人にも同様に調査し、虐待が脳の発達に与える影響を食い止める研究を進めるという。

 友田准教授らは、幼少期に長期間、体罰を受けた人の脳が、受けていない人の脳より前頭葉の一部が最大約19%縮んでいるとの研究結果を08年に発表している。

 児童虐待に詳しい関西学院大学人間福祉学部の才村純教授は「虐待の脳の機能面への影響を明らかにした点で興味深い。不安定な親子関係が続くと言葉の獲得が遅れ、論理的に物事を考えるのが難しくなることを一つのデータとして示した」と評価している。

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