2009年6月6日15時2分
事件現場近くのアイドルショップのショーウインドーに人波が映る。歩行者天国は再開のめどが立たない=東京都千代田区外神田、林敏行撮影
7人の命が奪われた無差別殺傷事件の現場となった東京・秋葉原の歩行者天国(ホコ天)は、事件から8日で1年となる今も、再開のめどが立っていない。「街のにぎわいのために必要だ」という意見は多いが、「安心・安全が確保されるまでは」との声も根強いからだ。
5月下旬の日曜日。茨城県から遊びに来た少年(19)は、車を止めていて2人組の警察官に声をかけられた。
「車の中、見せてもらえる?」。後部の荷物室まで調べ、警察官は立ち去った。
月1回ほど遊びに来る。「たぶん、他県ナンバーだから狙われるんすよ。やっぱ、車の中を見られるのは嫌っすねえ」。この1年で5回目の職務質問だったという。
事件の時、加藤智大(ともひろ)被告(26)のトラックが突っ切った「中央通り」は、今もパトカーが常に警戒を続け、街頭に警察官の姿が目立つ。警視庁万世橋署は事件後、署員を約20人増やした。
忌まわしい事件を想起させられる経験をした人もいる。
「アキバの秩序を乱すヤツが出てきた。抹殺する」
2月、芸能プロダクション社長の寺島春星(しゅんせい)さん(47)にメールが届いた。現場近くの空きビルでライブ会場の貸し出しを始めた直後だった。
「予想もしてなかったので驚いたし、怒りを感じた」。寺島さんは防犯カメラを二つ新設し、会場運営を続ける。
ホコ天再開を巡っては、昨年8月から千代田区や万世橋署、地元商店街に住民も加わって議論を続けてきた。今月2日の検討会でようやく、住民と企業が協力してパトロールしたり、周辺に防犯カメラを設置したりする方針を確認した。検討会の森野美徳会長(59)は「できる活動を重ねた先に、ホコ天の再開やそれにかわる路上イベントなど今後の形が見えてくるはずだ」と期待する。