2009年03月22日

ETC騒動とディズニーランドの困惑

ETC搭載車だけの高速道路割引制度がスタートしてしましました。私はこの制度は必ず破綻すると確信しています。


4年半前の2004年9月18日の朝日新聞「声」の欄に私の投稿が掲載されました。


「ETCのクレジット決済に疑問」 


ETCがクレジットの決済よって行われることに疑問を感じる。
日本道路公団によると、ETCカードの発行は、通常のクレジットカードと同様にカード会社の審査があり、ETCカードが発行されることを確認してから車載器の準備をするように、とある。


確かに現状でも、多くの高速道路の料金支払いはクレジットカードで済ますことが可能だが、これは利用者の任意による支払い方法の選択であり、ETC普及の理念とは関係ない。

クレジットは「付け払い」である。滞納債務者が激増していると聞くが、小さな付け払いの集積が多重債務者を生み出すきっかけになっている。国民共有の財産である道路を利用するため、クレジット会社の審査を要求され、クレジットにより道路使用料を請求されるシステムが、国の政策として正しいのだろうか。

政府は日本国民の借金に対する感覚を麻痺(まひ)させないためにも、こうした問題に対しても全力で取り組むべきだ。国民は「後に付けがまわってきた」といくら悔やんでもその時はもう遅いのだ。
<終了>


そもそもこの政策は、クレッジトが嫌いな人や、クレジットカードを持ちたくても持てない人は、ETCを利用できない仕組みになっており、国による 「 国民差別 」 と表現してもいいと私は考えます。


政権与党や官僚のETC制度による幻想と思惑について書きたいことはたくさんありますが、今日はETC搭載車の「通交料1000円制度」の弊害について意見しておきたいと思います。


結論から書きますと、このままでは首都高速は渋滞ではなく、「交通マヒ」の状態に陥る、というものです。


考えてみてください。定額給付金支給と高速料金の大幅値下げで、消費者が一番行きたい場所はどこかということを。


昨年12月30日の朝日新聞の一、二面のルポ日本にはこのようにディズニーランドが紹介されていました。

<引用開始>
「不況 ミッキーを求めて」
「居るだけでいい」癒しの聖地 
「お上」より信じられる


ミッキー人気が世界に広がったのは1929年に始まる世界恐慌の大恐慌の時代だと、これは10年前に米ディズニー本社で当時の幹部から聞いた。つらい時代、人はミッキーに癒されたのだ、と。


そして今、日本は「未曾有の」なる言葉が飛び交う苦境にある。経済ばかりではない。首相は立て続けに政権を放り出し、霞が関は年金問題の不始末その他でいかにも頼りなく、良くも悪くも日本を回してきた「お上社会」はお上総崩れで立ち行かない。

安心、安全、質の良さ。ディズニーというブランドは、お上が失ってしまったものを一手に引き受けている感がある。今や公的機関の色さえ帯び、その信頼度は群を抜く。

書店には「ディズニーに学べ」式の本が並び、ディズニー主催の企業や団体向け研修会に官庁職員も来る。


「この場所に居るだけでいい。周りはみんな笑顔だし癒されますよね」
年一度、必ず来ると決めていると二人は言った。これはもう幸せの確認作業、TDLはある種の神聖さを帯びてそうした人々を引き寄せる。
<引用終了>

多くの人たちがディズニーランドに行きたいと考えている、そう考えて間違いない、私はそう思います。


しかしながら、ディズニーランド側はこの施策にはきっと困惑しているものと推察されます。なぜならば、ディズニーランドの一日の入場者数、駐車可能台数には限りがあり、メリットよりデメリットの方が大きいからです。


ディズニーランドなどの観光施設が受けるこの施策のメリットとデメリットを整理してみます。 


まずメリットですが、東京ディズニーリゾート(TDR)は、空前の好況に沸くことでしょう。その理由です。


仮に、大阪から舞浜までJR新幹線を利用すると片道一人14,400円、往復28,800円かかります。 大人4人の往復の交通費は総額115,200円です。

一方、大阪圏から舞浜まで陸路を利用したガソリン代を含む交通費は片道推定10,000円、総額20,000円程度でしょう。 4人で割れば一人5,000円程度になります。 つまり、一人当たり20,000万円以上、4人の総額で90,000円以上交通費が節約できるのです。 乗車人数が増えればさらにこの数字は高まります。

この差額はTDRや周辺ホテルへの経済波及効果になって表れることでしょう。 


定額給付金も支給されます。 多くの人々は定額給付金でTDRを訪れたいと考えるに違いありません。 私が、TDRが空前の好況になると記したのはまさにこの理由からです。

一年間に一度TDRを訪れていた人たちが二度訪れるようになったり、飲食やお土産によりお金を使ったり、早朝来園者が宿泊したりするようになるに違いありません。

( あまりにも平日との差額が大きいため、平日の来園者数は減少するのかもしれませんが、1年の3割は休日であり、さらに高額な交通費がかからない3,000万人首都圏に住む 「 リピーター 」 が存在しているため、年間の入場者数は増加するものと私は考えます。)


他方、JRやTDRへのバスツアーを催行している旅行会社は打撃を被ることになります。 大阪発の0泊3日の夜行バスツアーの混雑日の料金は15,000円以上します。 チケット代を差し引いた交通費分は10,000円近くにもなり、4人乗車で車で行く場合の倍の金額であり、バスツアーが敬遠されることになってしまうかもしれません。


さて、ここまで舞浜地区のメリットと他の輸送会社等のデメリットを書いてきましたが、実は、一番の被害者は、車利用者であると私は推察します。 この点もTDRを例に取って説明します。

懸念される悪影響はTDR周辺道路や高速道路の大渋滞です。 千葉県や警察などの指導に基づき、これまでディズニーランドは、来園者に対し公共交通機関の利用を強く呼び掛けてきました。 新聞広告やラジオスポットなどを活用し、車両来場者数の減少に最大限の企業努力を重ねて来ました。

その甲斐があり、東京ディズニーランドだけで15,000台分も必要とした駐車場は、東京ディズニーシーが開業した今日でも、両パーク合わせて20,000台分の駐車場でおさまっています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%BA%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E9%A7%90%E8%BB%8A%E5%A0%B4


ここで少しだけ来場車両に関する専門的な分析を紹介します。 それは、日別来場車両数の予測に関することです。 ディズニーランドでは、過去の日別入場者数や、入場予約数や実施イベントなどの情報から、年間の入場者数予測、月間入場者数予測、日別入場者数予測を算出しています。

駐車場運営部門では、この日別予測入場者数と曜日や時期に合わせた予測来場車両数を独自に算出し、その数字に見合った駐車場の運営を行っています。


当たり前ですが、来園者数が多い週末は平日より来場車両は増加します。
さらに、「 カップル二人で一台 」 のクリスマス時期には、来場車両数は増加します。


一日の総入場者に対する来場車両数の割合は、この時期には15%から20%以上に高まります。 反対に 「 お母さんと子供たち 」 が多く来園する年度末の春休み時期のこの数字は10%以下に低下します。

つまり、同じ70,000人の入場者数であっても、クリスマス時期は軽く10,000台を超える来場車両数であり、春休み時期は5,000台にも満たない日もあるという 「 法則 」 が成り立っているのです。


もうお分かりでしょう。 JRではなく車両を利用した来場の経済的優位性とこの 「 法則 」 に基づいて、高速道路1,000円化後のTDR周辺の交通状況を予測すると、とんでもない状況が発生するに違いないのです。


東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを合わせた2007年度の入場者数は約2,500万人であり、休日の車両来場率が10%高まっただけでも、混雑日には10,000台から13,000台増加すると私は推察します。

ゴールデンウィークや夏休み、クリスマス時期などは、現状20,000台分の駐車場は満車状態となり、周辺は車で溢れ、高速道路は延々と渋滞するに違いありません。

そして、車両で来園しようとしても駐車場に止められない来園者が続出することでしょう。 なぜならば前記のように車両での来場を抑制する施策を行ってきたTDR側にはこれ以上打つ手はないからです。

このように、高速道路利用者が被害者になる高速道路1,000円化を事前の準備なしに強行することは愚の骨頂です。


また、JRだけではなくフェリー業界など他の輸送機関にも大きな悪影響が生じます。

大渋滞はTDR周辺だけではありません。 各地の大型のアウトレットモール周辺や、現在練馬から往復7,000円以上、新潟から往復12,000円かかる軽井沢の街中にも1,000円化で車が溢れ、駐車場不足が原因の大渋滞が発生することは火を見るより明らかなことです。

このような渋滞問題を解決するための具体策を考案しなくてはなりませんが、公共の交通網が発達した大都市圏にあるTDRに限って言えば 「 新タイプのパーク&ライド方式 」 この問題は解決されます。 同じ大都市圏にある大阪のユニバーサル ・ スタジオ ・ ジャパンにも当てはめられる方式と考えられます。

それは、都内や横浜などにある休日空いている駐車場まで車で行き、その後電車でTDRに向かうという案です。


都庁や日比谷公園、みなとみらいやお台場地区などの空いている有料駐車場を携帯電話で調べて利用したり、あらかじめ都内や横浜の宿泊施設を予約したりしてTDR周辺ではない場所で駐車場を確保するという案です。


こうすることにより、TDR周辺の高速道路の渋滞は緩和されるとともに、舞浜地区以外の宿泊施設の利用者も増加するに違いありません。

このように、リスクを予知した準備を周到に行えば大混乱も小混乱に抑えることができます。


高速料金1,000円化は民主党の無料化案に対抗して拙速に考え出されたものでしょうが、民主党もここまで記してきたようなデメリットやリスクをすべて洗い出し、時間をかけ慎重に高速道路の無料化を進めるべきです。


私は、今後もこのブログで災いを引き起こしている官僚たちの無能ぶりを批判していきたいと考えております。