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風速計

卒業式でオリンピックの話(石坂 啓)

 息子が高校を卒業した。親は卒業式に出なくてもいいだろうと思っていたが、せっかくの「都立高」なので出かけてみることにした。このところの式典はどんな様子なのだろう。

 なのに早い時間に着いて大喜びで保護者席の最前列に席を取ってしまい、あとから「しまった」と気がつく。子どもたちのことはよく見えるけど保護者たちの全体はわからない、そして「君が代」で着席する私のことは後ろの大人たちから丸見えで超目立つではないか。……いたしかたあるまい。

 考えてみると地元の公立小・中学校を経て、これまでに息子の入学・卒業式にはつごう六回参加している。順調に育ってくれてしみじみすると同時に、一二年前にはまだ「国旗・国歌法」がなかったのだとより感慨にふけってしまう。小学校の入学式では「君が代斉唱」として「ご起立ください」と司会者がうながすもので、わざわざ立ち上がらないでいた親たちもけっこういた。声を出して歌っている大人は周囲にはほとんどいなかったと記憶する。

 最近の傾向としてははじめに「開会の辞」で全員起立させてからすぐ「国歌斉唱」に続くので、全員が立ち上がってシンとしたところで座り直すのもそのあとの「校歌」でまた一人立ち上がるのも、ちょっと根性が要る。私は平気だけどあきらかに味方は減っていて、子どもたちより大声で本気で君が代を歌っているお父さんも周囲にいらっしゃった。私へのあてつけだったりあとから叱られたりしたらどうしようかと、ちょっとドキドキした。

 東京都教育委員会からの代表スピーチで、東京オリンピック誘致の話を得々と語っていたことにも驚かされた。国際交流の場となるのでぜひみなさんにも日本のために世界のためにご活躍をとかなんとかこじつけていたけど、卒業生への祝辞としてはどうなのよって感じだった。

 ともあれ、学校とのつきあいは私もひとまず「卒業」。素直に指示に従わない保護者がいることが今後はもっと厳しく問われることになっていくだろうから、ギリギリ、先生方に直接迷惑をかけずに逃げ切れたような気分でいる。でもそれってズルイよね。逃げ出せないでいる教職員や子どもたちの現場とは、これからもつながっていくつもりでいます。

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