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副官抜きのナポレオン?(石坂 啓)

「ナポレオン」というトランプゲームがある。

 ルールは些か込み入っているが、簡単に言っちゃうと4〜5人がナポレオンチームと連合軍チームに別れて絵札を取り合うというもの。おもしろいのは、ナポレオンと組んでいる副官が誰なのか、当人以外にわからないという点だ。

 カードを切りながら、誰が自分の味方なのかを推測する。早めに副官をあぶり出すという戦略もあるし、最後の最後までダマされたりもする。副官の腕次第で勝敗も大きく左右するし、ヘボいナポレオンと組まされて副官がジタバタ苦労するというケースもある。

 高校生の息子やその友人たちと、この夏はナポレオンにハマっていた。麻雀と同じでトランプも、メンバーの性格で打ち方がかわる。ケチくさいやつや空気の読めないやつがひとりでもいるとゲームはつまらなくて台無しだが、高校生たちはハッタリもカマせばムキにもなる。今どきのギャグも満載で私には相当に愉快だ。

 五十女と遊んでくれるコドモたちもどうよって感じだが、ふだんから一緒にメシを食ったりカラオケに行ったりしてるので、とりあえず仲はいい。「リクママ(私のこと)、自民党ボロ負けっスよ!」。参院選の開票速報も連中とカードを配りながら見た。「オッシャー!!ザマミロー!!(私のセリフ)」。慢性的に政治ニュースに熱くなっている私の性格を、彼らはよく知っている。

「憲法かわったら大変だぜ!」「自民党勝ったら3年後だぜ!」。大人に喋るのは面倒だが、コドモ相手にエバれる点は有利だ。みんなハイハイと聞いている。「ママ、いいから早く切りなさい」。母親がいつも興奮しすぎるので息子はいたってクールだ。この日私はアカギのバンソーコをゲラゲラ笑って交差点でスッ転んで、両ひざにバンソーコを貼っている。

 それにしてもこれほど空気を読めない総理がボスじゃ、副官たちも大変だ。今週は内閣改造がニュースの焦点だろうが、これまで大間違いのカードばかりを切っていたナポレオンに、みんなどうつきあっていくのだろう。

 このゲームはごくまれに、副官がいなくなるケースがある。指名したカードが自分のところに来てしまい、ナポレオンは味方のいないまま空しく戦うはめになる。降りるべきだったと普通は自覚するんだけどな、アベナポちゃん。




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