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【パリの屋根の下で】山口昌子 カンヌに登場した“蔑視”映画 (2/2ページ)
このニュースのトピックス:映画
しかし日本女性としては「国辱」しか感じなかった。電車内を擬したラブホテルの部屋が、文豪ビクトル・ユゴーの家があるパリの「プラス・ド・ボージュ」と名づけられているのは、日本人のパリへの憧憬(どうけい)を象徴したつもりだろうか。
最も納得しがたかったのは、殺し屋を生業とするほどの日本女性が殺しの標的のスペイン人になぜ、一目惚(ぼ)れしてしまうのか、という不自然さだ。相手がワイン店の店主というだけで「すてき」と思うほど、日本女性は外国人、特に白人男性に弱いと皮肉っているのだろうか。白人といってもこのスペイン人の男は髪も黒く、メタボ体形の普通のおじさんだ。それだけに余計に日本女性に対する蔑視(べっし)に思えてくる。
専門家によると、脚本も担当するコイシェ監督は女性の心理描写に優れた知的な作品で知られるとか。彼女にとって「トウキョウ」はあらゆる意味で巨大すぎて手に余ったのだろうか。
「映画なのだから目くじら立てることもない」という意見もあるかもしれないが、外国に住む日本人として「外国人が見た日本」は気にかかる。しかもポルノ映画でもB級の娯楽作品でもなく、れっきとした国際映画祭への出品作である。
監督や主演者らが正装で鑑賞する公式上演会では、スタンディング・オベーションが何度もあったと聞くが、これはあくまで儀礼、儀式。私が出席した記者向けの試写会では一部外国人記者からブーイングが起こった。外国人にも不満足だった人がいたことも、せめてもの救いといえようか。
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