2005年08月02日
上越市は公害企業に味方するのか！
信越化学工業は永年にわたって有害な重金（カドミウム、シアン化合物、砒素、水銀、トリクロエチレン、PCB等）を含む産業廃棄物を保倉川廃河川敷に不正に投棄してきた。管理する県は置き場として許可していたのに、事実上は捨場として使われていた。
これらは産廃法が施行される以前から捨てられていたので、現行法では管理型の最終処分場で厳重に管理しなければならないものであるが、既得権として認められてしまった。
廃河川敷は最終処分場と同様な工事がなされ、一旦は国から県へ贈与され、すぐに上越市に有償で払い下げられた。
この新潟県が許可した「環境整備事業」と名付けられた工事は、大量の有害物質にただ上辺だけ土で覆った工事であり、地域住民にとっては危
険この上ないものである。
本来ならこのような河川敷の返還に当っては原形復旧が基本である。それがこのよな工法が認められた背景には、信越化学側の主張である「掘
り起こしは技術的に不可能。廃棄物は大量で現状ではこれを受け入れる処分場がない。費用が膨大で企業の存亡にも関わる事態」が県によって認められたからである。
この点についてこの工事の差止めを求めた住民の仮処分の裁判で、裁判官はこれを却下したが「付近住民の健康被害や環境破壊等の防止という観点に立って今後とも当事者は勿論のこと、関係機関も更に検証作業を続けていく必要性がある自体を否定するものではないことは言うまでもない」と判決文の中で述べていた。
今回、この問題の土地は上越市に所有権が移され、ここに自然公園の整備計画が持ち上がったので、地域住民は再び仮処分を申請した。
環境省には土壌汚染対策法というものがある。これによれば「法は有害物質を取り扱っている工場・事業所が、土地汚染の有無が不明なままに放置され、例えば住宅地や公園のような不特定の人が立ち入る土地の利用に供せられることによって、人への健康影響が生じてしまうことを防ぐことを目的としています」とある。
また「そのため、汚染の可能性が高い土地について、有害物質を取り扱う施設の廃止など一定の機会をとらえて調査を実施すること、土壌汚染
が判明し、それによって人の健康に係わる被害が生じるおそれがある場合には必要な措置を講じること等を定めています」とある。
この問題の土地は信越化学工業が産業廃棄物処分場の看板を掲げて利用し、またその周辺には有刺鉄線が張られ、信越化学の子会社が常時パトロールしてきた場所だ。これは建物がなくても施設と見なされる。
また、「一定の機会をとらえて」とは、まさに今回のようなケースを指すことになるのではないか。そこで住民らは上越市に土壌検査を行なえ。土壌検査の結果がでるまで本件現場にて新たな工事はしてはいけない、という判断を求める仮処分を申請した。
この裁判の中で上越市の代理人弁護士である長谷川進氏は「『申立ての趣旨』自体、そもそも不明確で理解困難であり」と裁判所に答弁書を提出した。前回仮処分事件の判決文の中で「今後とも当事者は勿論、関係機関も更に検証作業を続けていく必要性がある…」としているから、それに沿って新しい所有者である上越市に対しての申立てにも関わらず、これを理解不能と退けようとの姿勢は信じられない。
地域住民が危険と思われるから検査をして欲しいと言っているのに、なぜ素直に検査に応じないのか？
信じられないことはこれだけでない。長谷川弁護士は裁判所に分厚い書類を提出した。これを見た原告側の住民は唖然としたそうだ。この文書は
他でもない、前回の裁判で信越化学工業側が提出した文書そのものだった。
住民と信越化学工業が争ったその訴訟で信越化学が出した文書と全く同じものが上越市の弁護士から出されたのである。
木浦正幸上越市長はいつから信越化学の腰巾着に成り下がってしまったのか？
判決は次の文で締め括られていた。、「なお念のため付言するに、以上の判断は、近隣住民らの中に本件土地の安全性に不安を感じている者がおり、行政機関等がその者らの不安を払拭するために如何に対処すべきかという政治的課題が存在することまで否定するものではない」
来るべき上越市の新しい市長を選出する選挙において、この政治的課題こそは選挙の争点となった。
木浦正幸市長が信越化学の代弁者として振る舞い。住民の不安に答えることをあくまでも拒むのであれば、それはそれで選挙民に問うしかあるまい。