新聞の社会面(あるいは国際面や経済面、地方版、時には1面)に掲載される、誰かが亡くなったことを知らせるお悔やみ記事。社内的には、某Y紙では亡者(もうじゃ)と呼びます。どんな記事でも間違いが許されないのは当然ですが、亡者記事の場合、短い中にも死者の名前や死因、告別式の場所や日時、喪主など、誤ったら取り返しのつかない要素が多いので、取り込み中とは承知しつつも遺族や関係者に確認を取ったり、原稿と元資料を複数の記者で読み合わせたりと、特に細心の注意を払います。地方支局に配属された新人時代は、亡者を書くのに相当緊張したものです。
亡者記事は、死者との関係が深い部署から出稿するのが通例でして、私も現在の部署に来てから、声優さんなどの亡者を担当する機会が何度かありました。11日も、たまたま第一報を受けたのが私だったのですが、率直に告白すれば最初はあんまりピンと来なかったんです。主題歌の作詞作曲や歌い手が誰かという点は、特に好きな方以外はそれほど気にかけずにアニメを視聴しているものですから。しかし、ちょっと調べただけで、この歌もあの歌も、ああ、そう言えばあのユニットも、と愕然としました。
記事を紙面に載せるだけの価値があるか、最終的に判断するのはデスクです。一般紙という範疇では果たしてどうか、正直微妙かもとも思いましたが、彼女がアニメの世界でどのような存在であったかは、意を尽くして説明しました。記事中にも、多少の知名度があるが故に旧作と混同されそうなものではなく、真に代表作と呼べる作品名を記したつもりです。ご遺族に連絡を取った際、込み上げてくるものでしばらく絶句してしまったのは、初めての経験でした。
さらに、原稿を出したとしても、それが紙面に載るかどうかは、編成部という部署の判断になります。しかも、締め切り時刻が早い順に12版、13版、14版(朝刊の場合。紙面上部に書いてあります)という版立てがあり、12版に載っても、その後に大きな事件などがあれば、途中で紙面から消えてしまう場合もあります。今回は、14版まで通しで掲載することができ、私が今の位置にいる意義をささやかながらも果たせてよかった、と感じた次第です。
岡崎律子さんのご冥福を、心より、心よりお祈り申し上げます。
Posted by fuku at 02:27 | anime | トラックバック (5)>しかし亡者て随分響きの悪い言葉使ってんだな。
http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1083945222/273
ちなみに、某A紙社内では同じことを死人(しびと)と呼ぶんだそうです。他の社は知りませんが。業界用語というのは、古くからあるせいか、基本的にあんまり良い言葉は使われない傾向があるようですが、内部の習慣として定着しているもので、別に悪意とかがあるわけではないんですけどね。
Posted by: fuku at 2004年05月14日 02:35そうか、Y新聞では君が書いていたんだね。
僕は熱心なファンでも何でもなかったけど、やはりショックでした。まだ若いんだし。
岡崎律子さんは、昔FMでやたらかかっていた時期があって(Nack5だったと思う)、デビュー作の「悲しい自由」のさびの部分がいまだに頭から離れません。
僕も彼女のご冥福をお祈りいたします。
Posted by: KAWASE at 2004年05月14日 21:44お久しぶりです~>KAWASEくん
私としては、ほちゃ、もとい堀江由衣さんが歌う「十兵衛ちゃん2」の主題歌「心晴れて 夜も明けて」が彼女の作詞作曲だったことにショックを受けました。一時期、脳内を無限ループしてたので。追悼の気持ちを、何とか形にしたいと思っています。
Posted by: fuku at 2004年05月15日 14:05今日の読売新聞朝刊で記事を見ました。
亡くなるまでの経過を大きく載せていただいてありがたいです。
今からでもより多くの人に知ってもらいたいと思ってます
ありがとうございます
今回、紙面でご紹介できなかった方も含め、本当にたくさんの方から、言葉に語り尽くせぬ思いをうかがいました。自分にその思いを受け止めるだけの資格があるのか、その思いを伝えるだけの能力があるのか、自問しながらの作業でした。ご協力下さった方、お読み頂いた方、そしてすべての方に感謝申し上げます。
Posted by: fuku at 2004年06月08日 01:25