実際は準備段階で終わった
加藤:細木数子さんの件については、ジャーナリストの溝口敦さんが『細木数子――魔女の履歴書』という本を書いている。その溝口さんと一緒に仕事をして、細木さんから6億6000万円の訴訟請求を受けた。6億6000万円という数字はなんだか分からないが、六星占術でいうと1つの星が1億1000万円として……×6かもしれない(笑)。
細木さんはどういうことになったかというと、(『週刊現代』の)連載の途中で細木さんが『週刊文春』でキャンペーンを始めた。しかし溝口さんは連載中に、広域暴力団の幹部から「細木さんの連載を止めてくれ」と圧力を受けた。このことを(溝口さんが)連載で書いたところ、細木さん側から訴えてきた。
細木さんは一連のことを法廷で明らかにしようとしていたが、溝口さんを訴えずに講談社を訴えてきた。溝口さんは裁判に補助参加……場外から加わる形で参加していただいた。しかしその後、細木さんは視聴率20%を誇る番組をバタバタと降りられた。「長く番組をやったから」というのが表向きの理由だ。
実際は公判廷……つまり準備段階で終わってしまった。もし公判が開かれれば、(細木さんは)証言台に立たなければならない。または溝口さんが証言する。しかもその前に、(細木さんが)誰にいつどこでどのようなことをしてきたか、といった資料を法廷に出していた。もしこれが明らかになればどうなるだろうか。この件についてはみなさんもご存じないと思うし、新聞やテレビなども一切報じていない。
相撲の問題は公益性の高いテーマ
加藤:朝青龍の八百長問題に関してだが、2007年の連載は全24回だった。連載を書いていただいた武田頼政(よりまさ)さんは、佐野眞一さんや田原総一朗さんと同じフリーのジャーナリスト。そのフリージャーナリストと『週刊現代』は全24回のキャンペーンを行ってきた。
武田さんが連載を始めたときに、時津風部屋の時太山(ときたいざん)リンチ事件※があった。あの事件は『週刊現代』が報じない限り、表沙汰にはならなかっただろう。そして、今のように(関係者が)無念を晴らすようことはできなかったはずだ。
また八百長記事のキャンペーンを行っていたとき、日経新聞のコラムでこう書かれていた。
「大晦日の夜、高砂部屋で横綱朝青龍を中心に大関3人がそろい、占い師のタレントと600万円の高級食材を使ったちゃんこに舌づつみをうった。和気藹々(わきあいあい)とその光景をにがにがしく思った相撲関係者は多い。横綱栃錦が現存していたら、どんなに嘆くだろう。
言葉は悪いが、栃若時代の師匠は『相手を殺すつもりで土俵に上がれ』と教えた。一門外とは口もきかず、勝負師として力士は筋金入りだった。殺気立つはずの支度部屋が締まりのない雰囲気では、先達が築いてきた伝統文化を守り切れない」