15兆円のバラマキ補正予算が、29日成立してしまう。今度の補正は、経済対策とは名ばかりのムダ遣いのオンパレードだ。なかでも象徴が、“国営マンガ喫茶”といわれる「国立メディア芸術総合センター(仮称)」(117億円)だ。6回の審議会でゴーサインが出たというが、日刊ゲンダイ本紙が入手した議事録を見ると、もうア然。審議会自体がマンガなのだ。
●急な方針転換に委員もア然
4月21日、文化庁5階の特別会議室。ここで開かれた「メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会」は役人のこんな説明から始まった。
「メディア芸術の拠点について1年間、ヒアリング、議論を重ねてきましたが、早期の建設は難しいと説明してきました。これが状況が変わりました。経済危機対策の中でメディア芸術の国際的な拠点を盛り込む検討が行われています。ついてはヒアリングではなく具体的な報告をしていただきたく、まとめの案を作成しました」
この審議会は昨年8月スタートした。この役人が言うように、当初は総合センターの建設なんて非現実的とみられていたのだが、いきなり方針が変わったのである。これにはメンバーもア然。
ポケモン代表の石原恒和委員は、「我々の検討の結果でこれが決まったのではないとは思うのですけれども……」と戸惑い、ぴあ総研代表の林和男委員も「急に決まって棚からぼたもちみたいな気が私もしているんですけれども……」と驚いていた。
会議では、「ハコはできても運営費が足りるのか」という質問も出された。
それも当然で、役人の説明では、「建設場所は決まっていません」と言いながら、「延べ床面積は1万平米」などと、やけに具体的だったりする。要するに、最初に“見切り発車”で建物の予算規模だけが出来上がっていたのである。
青木保文化庁長官は、「こういう予算が急につくというのもあれですけど、こういう機会というのは、まず今後50年は来ないでしょうね。100年は来ないかもしれませんね」などと言い、座長の浜野保樹東大教授は運営費について、「メディア芸術に貢献された手塚先生とか、ゲームのミヤモトさん(注…任天堂の宮本専務のことと思われる)に遺言であそこに寄付しろとか書いておいてもらうとかね」とか言っていた。
公の審議会とは信じがたいノリだ。
民主党参院議員の大塚耕平氏が、呆れてこう言う。
「経済危機に便乗した官僚の『悪ノリ』としか言いようがありません。政権交代の暁には、バカげた予算の執行停止命令を出し、国庫に返済させます」
文化庁は「建設イメージ図」を公表しているが、この設計には97万円が支出されている。設計なんて今後のコンペでどうにでも変わるのに、イメージ図に100万円のデタラメ。
一事が万事と言うしかない。
(日刊ゲンダイ2009年5月29日掲載)