現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 国際
  4. 国際支援の現場から
  5. 記事

天安門にバラの花束を

2009年5月29日

  • アムネスティ・インターナショナル@中国

写真天安門広場に集まる市民。1989年。Hei Han Khiang写真天安門事件で殺害された袁力(Yuan Li)さん、享年27歳の写真写真オンライン署名「天安門にバラの花束を」のサイト

 「お手紙ありがとう。…私たちは1989年に命を落とした人たちを決して忘れません。彼らは永遠に私たちとともに生きるでしょう。みなさんのお力添えのお陰で私の人生がより良いものになることは間違いありません」〜「天安門の母たち」のメンバーからカナダのアムネスティ会員に対する返信〜

 1989年の6月3日から4日までの間に中国・北京市の天安門広場で起こった民主化運動の弾圧を、当時学生だった私は食い入るようにテレビで観ていた。6月3日の夜、民主化を求めるデモ隊を排除するため、重装備の部隊はデモ参加者や見物人に向かって銃を乱射し、市民数百人が殺害された。さらに、動けなくなった市民が装甲車によってひき殺された。

 2009年6月4日は、事件から20周年にあたる。残念ながら中国政府は、20年たった今も、事件に正面から向き合おうとしていない。それどころか20周年の6月が近づくにつれて、中国国内で事件についての議論をさらに封じ込めるような動きが目立っている。

■6月を前に激しさを増す弾圧

 2月15日、著名な人権活動家である馮正虎(Feng Zhenghu)さんが上海市警察によって拘束され、1カ月以上にわたって拘禁場所が知らされない「強制失跡」の状態に置かれた。馮さんは1989年当時、民主化運動が弾圧される危険があるという予測記事を発表した中国企業発展研究所の所長だった。馮さんはその後釈放され、4月に来日して記者会見を行っている。また、4月30日のアムネスティ発表国際ニュースは、天安門事件の遺族の代理人や被害者本人、またその他の人権活動や民主化運動に取り組んでいる活動家への弾圧が強まっていることを示す具体的なケースを伝えている。

 天安門事件の最中に銃で撃たれ負傷、障害が残った斉志勇(Qi Zhiyong)さんは、テキストメッセージで警察に拘束されたことを記者に伝えた。斉さんは以前、もし彼が北京オリンピック開始前に北京を離れなければ逮捕すると脅迫されていた。斉さんの取り扱いと拘禁は、20年前の民主化運動のきっかけとなった胡耀邦元総書記の死の20周年と関連していると考えられる。

 北京の程海(Cheng Hai)弁護士ら2人は最近、警察と裁判所を調整する政府機関の人間だと名乗る少なくとも4人に襲撃された。襲撃された時、弁護士たちは依頼人の家族に会う途中であった。さらに、司法と政治の改革を求める「08憲章」に署名した人びとへの尋問が各地で行われている。署名者の1人で河南省の石油プラントで働く劉莎莎(Liu Shasha)さんは、街頭で憲章を印刷し配布したとして4日間拘禁された。

 2008年北京五輪での人権公約など、最初からなかったかのような弾圧ぶりだ。私たちは、とりわけ「天安門の母たち」への弾圧を心配している。「天安門の母たち」は天安門事件で家族を失った人びとの会で、女性を中心に130名ほどが事件の真相究明や賠償を求めている。彼女たちは、公の場で事件について議論し、亡くなった我が子や夫を追悼したいと望んでいるが、それゆえに当局から嫌がらせや差別を受け、恣意的に拘禁されることもある。冒頭のメッセージは、そうした遺族からのメッセージだ。

■6月4日のブーケ 天安門広場をバラで埋め尽くそう

 今回アムネスティは、6月4日の天安門事件20周年に向けて同広場をバラで埋め尽くそう、という署名アクションを開始した。と言っても私たちが直接広場に行ってバラを献花するのではなく、署名の数をバラの花で表そうというものだ。バラを飾ることには、ある意味がある。1989年の天安門事件から数年後に、当時、デモに参加していた学生が匿名でインターネットにメッセージを投稿した。学生はネット上で、毎年事件が起きた6月4日が来ると、犠牲となった人びとをしのび、天安門に6本の白いバラと4本の赤いバラのブーケをささげていると告白した。そして、政府の弾圧を受けることなく被害者を追悼できる日がくることを祈っていると語った。以来、「6月4日のブーケ」と呼ばれ、天安門事件の犠牲者のために正義を求める象徴となっている。

 オンライン上では今、天安門広場にバラの花が増え続けている。まるで白と赤のバラのカーペットのようだ。バラのイラスト付きメッセージカードによる署名も含め、3週間ほどの間に1500筆以上の署名が集まっている。また日本以外にも、英国、スペイン、ポルトガル、ウクライナ、チェコ、スイス、オーストリア、香港、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルなど世界各地でバラのブーケによる天安門事件メモリアル・アクションが行われる予定だ。

 「天安門の母たち」や、あの日民主化を求めてデモに参加した人びとが、本物のバラのブーケを天安門広場にささげることができる日を、私たちも祈っている。

(アムネスティ・インターナショナル日本:国際キャンペーン担当:川上園子)

◎オンライン署名「天安門にバラの花束を」(6/1まで)

■■■インフォメーション■■■

☆☆☆アムネスティの活動に参加しませんか?☆☆☆

 アムネスティ・インターナショナルの人権活動は、世界中のひとりひとりのサポーターに支えられています。すべての人に人権が守られる世界のために、あなたもアムネスティの活動にサポーターとして参加しませんか? 

 日本でも、人権侵害をやめさせるためのオンライン署名など直接的なアクションを企画したり、各国の人権状況を知らせるためのイベントを開催するなど、アムネスティの活動は様々な分野で全国のサポーターのみなさんが支えています。サポーター入会申し込み手続きは、ウェブサイトからも簡単にできます。

詳しくはこちらから。

☆☆☆メールマガジンに登録しませんか?☆☆☆

 アムネスティ日本の活動状況や国際ニュース、イベントなどの情報を週1回メールでお届けします。購読は無料です。

お申し込みはこちらから。

☆☆☆「人権パスポート」プレゼント☆☆☆

今なら、アムネスティ日本のウェブサイトから資料請求をしてくださった方全員に、谷川俊太郎さんの言葉でやさしく語られた「世界人権宣言」全文を収録した特製「人権パスポート」を差し上げています。

資料請求はこちらから。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内
  • 中国特集