2009年6月1日3時1分
利用者が専用の端末を使うと、予約した本がある棚を光で知らせるシステム=31日午後、東京都府中市の市立中央図書館、福留庸友撮影
全国の公立図書館の6館に1館が業務を民間企業を中心に外部に委託し、その割合は今後も増える見通しだ。財政難に苦しむ自治体が運営費削減を狙っているためだが、およそ本とは縁の無さそうな異業種からも参入が相次ぎ、異色のサービスも次々に登場している。
東京都府中市に07年12月に開館した市立中央図書館では、約85万冊の全蔵書にICタグが付けられ、一部の本棚には読み取りアンテナがある。利用者が専用端末を使って瞬時に本の場所を探せ、予約した本の棚のライトが光る仕掛けも。車に乗ったまま館外からも返却ができる。
前身の旧館に比べて年間貸出冊数は1.7倍に増加。11カ月間で、来館者が100万人を突破した。
IT(情報技術)を駆使しようというアイデアは、設計から加わった図書館流通センターがもたらした。
センターの調査では4月現在で、全国約3千館のうち委託は約17%に当たる516館まで増えた。野村総合研究所の推計では、図書館サービス市場は、12年度には08年度比29%増の1030億円に拡大する見込みだ。
公共施設の管理運営を民間にも開放した指定管理者制度が原動力。あらゆる分野で市場縮小が広がるなか、図書館市場は拡大を続ける。公立図書館は98年から10年間で602館が新設。市街地活性化の目玉として再開発ビルの主要施設として開館したケースも多い。日本図書館協会によると、08年の利用者は、団塊世代の利用増や消費不況もあり前年比4.5%増えた。
美術館や音楽ホールの運営実績を持つサントリーグループは、都心の千代田区立千代田図書館に、飲食店や書店も案内できるホテルのようなコンシェルジュを常駐させる。神田神保町の古書街と連携した展示など企画力が強みだ。「機会があれば受託を増やしたい」という。