オッショイ!九州

政治・経済

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

現場発:岐路の街・阿久根/下 竹原派、異論認めぬ空気

 ◇「結集軸」に危うさも 疲弊の街、行く末誰に

 質問が出た途端、会場の雰囲気が一変した。出直し市長選を1カ月後に控えた4月28日夜、鹿児島県阿久根市内であった竹原信一氏(50)のミニ集会。竹原氏が約30分にわたって議会や市職員を切って捨てた後、40代の男性が手を挙げた。「当選しても、また議会とぶつかるのでは」

 竹原氏に代わって答えた市議の矛先は議会に向いた。「議会と市民の対話集会で、参加者に実施したアンケートでは不信任案に6割が反対したのに、再び可決した」。市民を無視したという論調。男性が「あの集会は竹原支持者が多かった。偏りがある」と口を挟むと、出席者の一部が怒り出した。「市政に関心を抱いたのは竹原さんのお陰だろう」

 昨夏の市長選で竹原氏に投票したという男性は、たまらず会場を後にした。「『質問して』と言いつつ、都合が悪いことには答えないなら言わない方がいい。彼には慢心するなと言いたい」

   ◇  ◇

 昨秋の市職員採用試験。作文の課題は「竹原市長の公約について考えを述べよ」だった。市への就職希望者に首長の公約について尋ねる踏み絵のようなやり方。批判する議員に竹原氏は動じる様子もなく、こう反論した。「市長の公約に反する考え方の人間は採用できません。当然だ」

 反対する者は容赦なく攻撃する竹原氏。「小泉純一郎元首相と似た部分がある。争点を絞ってワンフレーズが分かりやすく、有権者の憂さを晴らしている。街全体が疲弊し出口が見えない中で、彼が『不満の結集軸』になっている」。鹿児島大の平井一臣教授(政治学)はそう分析した。

   ◇  ◇

 「世間の常識に照らし是は是、非は非という改革をします」。反竹原派陣営が16日夜に開いた決起集会。元国土交通省職員の田中勇一氏(56)は約1000人を前に力を込めた。

 反竹原派市議らが市長のすげ替えに動き始めたのは昨年末だ。複数の名が上がっては消え、今年3月になって田中氏が決まった。知名度不足を意識してか、演説の大半は自己紹介に費やされた。

 代わりに熱弁をふるったのは来賓だ。地元選出の中村真・県議会副議長(自民)は「連携して国や県の予算を獲得するのが県議と市長の仕事だ」。国会議員の祝電も披露され、さながら国や県との“パイプ”の大切さを強調する場となった。

 議会と市役所を変えることに全力を挙げる竹原氏にとって、国や県とのパイプはさまつな問題に過ぎない。「陳情で政策が変わる状況があっていいのか」。そうブログに記した竹原氏に、市議の一人は「国や県にお願いしなければ、阿久根のような小さな街に未来はない」と反論する。

 内部をぶっ壊して自立の道を突き進むのか、国や県の力を頼りに活性化を模索するのか。閉塞(へいそく)感が漂う街のかじ取り役を決める選挙は24日に始まる。

    ◆

 連載は三木陽介、川名壮志、福岡静哉、馬場茂が担当しました。

毎日新聞 2009年5月20日 西部朝刊

政治・経済 アーカイブ一覧

 
郷土料理百選
地域体験イベント検索

特集企画

おすすめ情報