【テヘラン春日孝之】アフガニスタンでの米国と北大西洋条約機構(NATO)の対テロ戦を巡り、NATOがイランに補給路の提供を公式に要請、米国も非公式レベルで折衝していることが31日分かった。複数の関係筋が毎日新聞に明らかにした。外国部隊の主要補給路であるパキスタン・ルートが武装組織の攻撃にさらされる中、イラン・ルートの重要性は高い。実現すれば、米イラン関係修復の突破口になる可能性も出てくる。
アフガンへの補給はパキスタン経由の陸路2ルートが全体の7割を占める。だが、08年11月以来、アフガンの旧支配勢力タリバンが輸送トラックや物資集積所を襲撃するなど攻撃を激化している。
2月にはキルギスが、米軍の空輸拠点として提供していたマナス空港の閉鎖を表明した。ロシアは非軍事物資に限り、中央アジアを経由する自国ルートの提供を認めたが、今後、米国がアフガンに2万人規模の部隊を増派する中、弾薬や軍用車両の輸送路開拓は死活的に重要な課題になっている。
関係筋によると、こうした中でNATOがイランに外交ルートを通じ、陸路での補給路提供を求めた。米国もイラン側と非公式に接触。チャバハルとバンダルアバスを起点とする陸路3ルートが検討されている。実現するかは「最終的に大統領レベル以上の決断」(関係筋)にかかっている。
対テロ戦の生命線となる安定的な補給路の提供が実現すれば、オバマ米政権とイランの関係修復につながる可能性も出てくる。
毎日新聞 2009年6月1日 2時30分(最終更新 6月1日 3時06分)