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ニュースの核心:県立地域診療センター無床化 医療体制、地域に丸投げ /岩手

 ◇市町村の財政力無視、将来に深い霧

 県立地域診療センターの病床休止(無床化)問題で、達増拓也知事も出席する地域住民対象の説明会が、無床化した全5カ所で終了した。知事は、地域医療について「一番身近な市町村が担い、手が届かない部分は県、国が行う」といった将来像を描く一方、「2次医療圏ごとに設ける懇談会で話し合ってほしい」と具体像づくりは地域に丸投げした。だが、現在進む懇談会でも県の目指す姿や支援策は見えず、市町村などの反発を招くばかり。岩手の地域医療体制の将来は、深い霧がかかったまま、先がみえずにいる。【山口圭一】

 「医師不足など状況が厳しいため、今後の在り方は考えられない」。奥州市であった胆江地区の懇談会で田村均次局長は言い放った。地域医療体制の再構築を、地域に丸投げした瞬間だった。

 懇談会は、今後の地域医療体制をどのように構築するか、市町村、医療機関、住民らと話し合う場だ。9保健医療圏単位で複数回話し合いを持つ。先行して開かれた説明会で、具体性を持たなかった達増知事の言葉を補完すると思われた。

 知事や県医療局は、説明会と懇談会で、県は高度医療を含む救急体制を守り、地域医療は地域が構築することを求めた。そのために地域に用意された支援策は、無床化されたセンターの民間活用に限定される。賃料を初年度は半額に、翌年度以降は4分の1に引き下げるほか、県保健福祉部も介護保険料を補助する。無床化センターがない4地域には支援メニューはない。

 岩手の地域医療は、県の医療機関を中心に成り立ってきた。財政力の弱い市町村単独で担うことは難しい現状を無視したと言え、懇談会では大きな反発を招いた。

 花巻市で開かれた中部圏域地域医療懇談会では、本田敏秋・遠野市長が県担当者をしかりつけた。「集中、選択する中でどう代替案を示すのか」と迫る一幕すらあった。奥州市医師会の石川健会長は「医療局の姿勢が見えない。連携したいが、取っかかりがない」とあきれさせた。

 だが、住民の健康と福祉の確保に遅滞は許されない。花泉と大迫の地域診療センターが19病床それぞれ無床化された一関、花巻両市は、民間医療機関や老人保健施設などの公募、空き病床の活用を探り始めた。

 医療機関と介護・福祉施設の連携に課題は少なくない。県内の特別養護老人ホームの入所待機者は08年3月末現在5422人に上る。患者の受け入れを進めるのは容易でない。

 医療機関と福祉施設の調整役を務める県地域包括・在宅介護支援センター協議会の吉田均会長は、「ニーズを再確認して、地元医師やケアマネジャー、市町村担当者ら現場の人々が話し合う場」の設置を提案する。だが、「国や県は、療養病床の老保施設への転換や在宅ケアを進めながら、手当てがなく矛盾している」と、改めて本末転倒ぶりを指摘する。

毎日新聞 2009年5月31日 地方版

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