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2027年02月01日

2世紀後半の倭国大乱〜孝霊天皇の吉備平定〜卑弥呼(百襲姫)誕生


魏志、後漢書などの中国の史書には、西暦2世紀後半頃に、倭国で内乱があって、それが切欠で女王卑弥呼が誕生したという記述がある。そして、この女王卑弥呼が3世紀中頃までの長期間にわたって、倭国を統治したという記述がある。
 其國本亦以男子為王、住七八十年、倭國亂、相攻伐歴年、乃共立一女子為王、名曰卑彌呼、事鬼道、能惑衆、年已長大、無夫婿、有男弟佐治國。自為王以來、少有見者。以婢千人自侍、唯有男子一人給飲食、傳辭出入。居處宮室樓觀、城柵嚴設、常有人持兵守衛。
 その国、本は男性を王としたが、七、八十年で中断し、倭国は擾乱、互いの攻伐が何年も続くに及んで一人の女性を王として共立した。名を卑彌呼といい、鬼道(五斗米道の教え)に従い、(呪術で)よく衆を惑わす。年齢は既に高齢で夫はなく、弟がいて国の統治を補佐した。王位に就いて以来、会えるものは少なく。婢(下女)が千人、その側に侍り、ただ一人の男性が食事を給仕し、伝辞のため出入する。居住する宮殿や楼観、城柵は厳重に設けられ、常に武器を持った守衛がいる。
引用元:『三国志魏書』倭人伝
 桓霊間倭國大亂、更相攻伐、暦年無主。有一女子名曰卑彌呼。年長不嫁、事神鬼道、能以妖惑衆。於是共立属王。侍婢千人、少有見者。唯有男子一人給飲食、傳辭語。居處宮室樓觀城柵、皆持兵守衛。法俗嚴峻。
 桓帝と霊帝の間(146−189年)、倭国は大乱、互いに攻伐しており、暦年に亘って君主がいなかった。一人の女子がいて、名を卑彌呼という。年増だが嫁がず、神鬼道に仕え、よく妖術を以て大衆を惑わす。ここにおいて(卑彌呼を)王に共立した。侍婢は千人、会える者は少ない。ただ飲食を給仕し、言葉を伝える一人の男子がいる。暮らしている宮殿、楼観、城柵、いずれも武器を持って守衛する。法俗は峻厳である。
引用元:『後漢書』東夷伝
 漢靈帝光和中、倭國亂、相攻伐歴年、乃共立一女子卑彌呼為王。彌呼無夫婿、挾鬼道、能惑衆、故國人立之。有男弟佐治國。自為王、少有見者、以婢千人自侍、唯使一男子出入傳教令。所處宮室、常有兵守衛。
 漢の霊帝の光和中(178−184年)、倭国は乱れ、何年も戦さを続けたので、卑彌呼という一人の女性を共立して王とした。彌呼には夫婿はなく、鬼道を身につけ、よく衆を惑わすので、国人はこれを立てた。国政を補佐する弟がいる。王となってより会った者は少ない、千人の婢が側に侍り、ただ一人の男子に教令の伝達のため出入させている。暮らしている宮殿には常に兵がいて守衛している。
引用元:『梁書』倭国伝


日本の記紀でもこれと似たような記述がある。女王卑弥呼と同一人物として有力視されているのが、日本書紀では倭迹迹日百襲媛命、古事記では夜麻登登母母曾毘賣命という皇族出身の巫女で、占いによって当時の天皇が行う政治に影響を与えたのだが、中国史書に出てくる記述(2世紀後半の倭国大乱、3世紀中頃の狗奴国との戦い)と一致させるようなものが、日本の記紀にも登場する。

中国史書に出てくる、卑弥呼が誕生した切欠になった2世紀後半の倭国大乱は、古事記では、夜麻登登母母曾毘賣命(=卑弥呼?)の父親にあたる孝霊天皇の箇所で出てくる。次の古事記の原文がそうであり、孝霊天皇の時代に、播磨国を通過して吉備を攻め平定した記述が出てくる。この孝霊天皇は、日本書紀では欠史八代といわれる天皇の一人であり、古事記では、日本書紀で欠史八代とされる天皇の中で唯一、孝霊天皇だけ行跡の記述があり、それが吉備平定の話なのである。
大吉備津日子命與若建吉備津日子命、二柱相副而、於針間氷河之前、居忌瓮而、針間爲道口以言向和吉備國也。
引用元:『古事記中卷』孝靈天皇


孝霊天皇の吉備平定の話は、孝霊山 高杉神社、吉備津神社、楽楽福神社、水主神社、日野郡誌、岡山桃太郎神社などの伝承に、記紀よりも詳細に残っている。


また、孝霊天皇の吉備平定の話は、桃太郎伝説のモデルになったといわれている。

吉備(キビ)=黍(キビ)団子
百襲媛(モモソヒメ)の百(モモ)=桃(モモ)
百襲媛の同母弟・彦五十狭芹彦命(吉備津彦命)
百襲媛の異母弟・稚武彦命(吉備氏の祖)=桃太郎のモデル



ちなみに、倭国大乱があった2世紀後半、3世紀中頃は、日本でも世界でも寒冷化を迎えており、それが大乱の要因になったと思われ、また、考古学的には、瀬戸内海地域から2世紀後半頃の高地性集落遺跡(山頂等に営まれた城塞的な集落の遺跡)が多数発見されており、倭国大乱・孝霊天皇の吉備平定の痕跡だと思われる。



→次は3世紀の狗奴国との戦い〜卑弥呼の急死


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posted by 邪馬台国総論 at 14:50 | TrackBack(0) | コンテンツ
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