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USB 3.0の普及を確実視する理由



USB 3.0がサポートするデータ転送モード。1.5Mbpsから5Gbpsまで、4種類すべてをサポートする

 5月20日、USB-IF(USBインプリメンターズフォーラム)は、東京で「SuperSpeed USB Developers Conference」を開催した。SuperSpeed USBは最高5Gbpsの新しい伝送モードで、昨年11月に規格化されたUSB 3.0で導入された。USB 2.0までのLow Speed(1.5Mbps)、Full Speed(12Mbps)、High Speed(480Mbps)に加えて、計4つの伝送モードを持つことになる。

 今回のイベントの目玉は、このSuper Speedに対応した異なるベンダーによる試作品同士の相互接続を、公式にデモンストレーションしたことだ。USB-IFのJeff Ravencraft議長が行なった基調講演では、複数の参加企業によるリファレンスデザインが紹介され、USB 3.0に対応したPCとRAIDストレージ間で、約200MB/secのデータ転送が可能なことが披露された。この速度は、USB 2.0では絶対に実現できない水準(約5倍)である。

 異ベンダー間の相互接続がこのタイミングで披露できたことで、USB-IFが言う2009年内の製品リリースがグッと近づいた印象だ。もちろん年内に提供される製品は、PCI Express拡張カードやExpressCardのようなアドオン製品で、チップセットがUSB 3.0のホスト機能を内蔵するのは当面先になる。

 またWindows 7でも、USB 3.0へ対応するための準備は行なわれるものの、USB 3.0のドライバが最初から含まれるわけではない。Microsoftのドライバは、いずれサービスパックやWindows Updateで提供されるだろうが、とりあえずドライバはアドオン製品にCD-ROM等でバンドルされることになるだろう。

 USB 3.0対応製品が年内に登場すると、おそらくPC用の外部インターフェイスとしては、その時点で最も高速なものになりそうだ。現在クライアントPCが標準的に備えている外部インターフェイスは、USB 2.0に加え、Gigabit Ethernet(GbE)、eSATA、IEEE 1394aといったところだ。USB 3.0は間違いなくこの中で最速だ。

 USB 2.0より高速な外部インターフェイスであっても、IEEE 1394bやPCI Express(ケーブル規格)はほとんど普及していない。おそらくこの2つは、ニッチな用途に使われることはあっても、USBほどポピュラーになることや、ほぼすべてのPCが標準的に搭載することはないだろう。

USB 3.0によるデータ転送速度をデモするUSB-IFのJeff Ravencraft議長。左側がPC、右側がRAIDストレージだ USB 3.0でのデータ転送は約200MB/secと、USB 2.0では実現不可能な数字を記録した NECエレクトロニクス製のコントローラチップを搭載したPCI Express x1対応のリファレンスデザイン

●4つの理由でUSB 3.0が普及する

 では、USB 3.0は広く普及するのか。その可能性は極めて高い。何らかの理由により、自爆/自滅することさえなければ、普及したUSB 2.0の後継として、徐々に置き換わっていくものと思われる。その理由としては次の4つが考えられる。

 まず最初は上述した高速性。USB 3.0はUSB 2.0の10倍を超える5Gbpsのデータ転送速度(理論値)を持つ。もちろん、インターフェイスは高速であるに越したことはないし、高速化がUSB 3.0を開発した大きな理由であることは明らかだ。しかし、高速化がユーザーへの普及を推進する原動力か、と言われると、その答えはノーだろう。

 現時点で、一般的なユーザーが利用する周辺機器で、USB 2.0でまかなえないものは、HDDとSSDくらいしか存在しない。もしUSB 2.0ではHDDやSSDの利用が遅すぎて、というのであれば、より高速なeSATAが急速に普及している。

 しかし、量販店の店頭で幅を利かせるのは、圧倒的にUSB対応の外付けHDDである。現時点においては、USB 2.0がバスボトルネックになっているとしても、その制約はユーザーが乗り替えを決意するほどのものではない、ということになる。となれば、同じ理由で高速性がUSB 3.0普及の決め手にはならない。高速性は将来的にもっと重視されるようになるだろうし、高速性が新しい周辺機器を生み出す可能性を秘めているとしても、USB 3.0普及の立ち上がりを促すものではない。

 USB 2.0に対応した周辺機器が好まれる最大の理由は、USBが給電能力(バスパワー)を持っており、真のプラグ&プレイをサポートしていることだ。つまりUSB周辺機器の多くは、USBケーブルを1本接続するだけですぐに利用することができる。たとえばeSATAでHDDを接続する場合、電源ケーブルとデータケーブルの両方を接続する必要がある。これではプラグ+プラグ&プレイになってしまう。

 ケーブル1本で済むという手軽さ、それを可能にしたバスパワーこそが、USBを成功に導いた大きな原動力だ。USBケーブルはデータ転送路であると同時に、携帯機器にとっては電源ケーブルでもある。USBを名乗りながらWireless USBがなかなか普及しない理由の1つは、電源供給能力を持たないからではないか。

 ただし周辺機器への電源供給能力をサポートしたのは、何もUSBが初めてというわけではない。IEEE 1394は、当初から周辺機器に電源供給を行なうことを前提に開発が行なわれた(6ピン規格)。デイジーチェーン接続のトポロジをサポートする(周辺機器自体が電源オフでもバスそのものは動作するようにポートに給電する必要がある)こと、そしてSCSIの後継としてHDDを駆動可能にするためであった。

 しかし、IEEE 1394の開発がスタートした'80年代後半は、HDDの主流が5インチから3.5インチへと移行していた時期。これがIEEE 1394に、携帯機器向けとしては高すぎる電源供給能力を要求し、ひいては電源供給能力を省略した4ピン規格(dvコネクタ)を生み出す要因の1つとなる。ノートPCを含め、圧倒的にPCに採用されているのはこの4ピン規格であり、4ピンケーブル1本では外部周辺機器に電力の供給はできない。

 現在、SATA-IOでは、eSATAで電源供給を可能にするPower Over eSATAイニシアチブを立ち上げ、規格化を図っている。これが実現すれば、USB同様ケーブル1本でHDDや光学ドライブの接続が可能になるが、初期目標として3.5インチHDDの駆動が設定されている点が気になる。3.5インチHDDを駆動するには10W級の給電能力に加え、12Vの供給が不可欠だ。これをノートPCでサポートするのは現実的ではない。

 それに比べるとUSBの電源供給能力は極めて控えめだ。USB 2.0までは規格上5Vで500mA、つまり2.5Wしかない。2.5インチHDDの消費電力は通常2W以下だが、スピンアップ時にはもう少し必要になることから、ノートPCによっては、うまくHDDがスピンアップしないことなども初期には見られた。現在市販されているほとんどのノートPCでは、USB 2.0対応であっても1A近く電流を流せるように設計されており、こうしたトラブルはまず生じない。USB 3.0では、こうした現実を追認する形で、規格が900mAまで引き上げられており、2.5インチ以下のHDDやSSDを問題なく駆動できる。この辺りの割り切りの良さ、現実に即した規格設定が、USBが成功した大きな理由であり、3.0も普及するのではないかと思う所以だ。

●互換性とIntelのバックアップ

 さて、USB 3.0の普及を後押しするのは、これだけではない。現在普及しているUSB 2.0の上位規格として、一定の互換性を保っていることは、USB 3.0の普及に有利だ。USB 1.xから2.0の時と同じように、USB 3.0では既存のコントローラを高速化するのではなく、Super Speedモード用に新しいコントローラを追加する。これにともない、コネクタにも新しいピンを追加するという力業だが、互換性を持つことに変わりはない。とりあえずUSB 3.0のポートがあれば、古い周辺機器も使えるというのでなくては、既存のUSB 2.0ポートを置き換えられない。

 もう1つ大きいのは、USB 3.0のバックにはIntelがついており、いずれは事実上、無償のインターフェイスとして利用可能になることだ。初期に登場する製品は、NECやTIなどサードパーティ製のコントローラを搭載したものになるが、いずれUSB 3.0はチップセットの標準機能となる。過去の例から考えて、USB 3.0の機能が加わったからといって、チップセットの価格が上がるわけではないし、仮に上がったとしても微々たる額だ。高速化したUSB 3.0を利用するのに、ユーザーが別にコストを負担する必要はないのだから、普及するのも当たり前であろう。

USB 3.0のミニBコネクタは、既存のミニBコネクタに5ピンの新コネクタを連結した、2機編隊構成 USB-IFのJeff Ravencraft議長もIntelの出身
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