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【社会】

脳の命令、脊髄が“交通整理” 自然科研などチーム解明

2009年5月28日 朝刊

GFPで神経細胞を目立たせたゼブラフィッシュの稚魚=生理学研究所提供

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 自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の東島真一准教授(42)を中心とした、同研究所と東京大、名古屋大の合同研究チームが27日、魚の脊髄(せきずい)に脳からの命令を“交通整理”する神経細胞があることを突き止め、米国神経科学会誌に発表した。

 脊髄の働きは、痛みや熱さに反応して脳の命令より早く四肢を引っ込める「反射」が知られているが、脳からの信号を選択する機能の発見は初めて。

 ノーベル化学賞を受賞した下村脩・米ボストン大名誉教授(80)が発見した緑色蛍光タンパク質(GFP)で神経細胞を着色したゼブラフィッシュの稚魚を使用。レーザーで脊髄の「コロ細胞」を焼いて機能を失わせた魚と正常な魚を比べる実験を繰り返した。

 天敵接近を模し、真下から音波の衝撃を与えると、約3割の確率で人間の脳幹にあたる別の細胞が混乱。「左へ逃げろ」「右へ逃げろ」と相反する命令を同時に発信する。

 すると正常な魚は瞬時に左右どちらかに回避運動をしたが、機能を失った魚は立ちすくんだようになり、ほとんど動けなかった。

 研究チームは、コロ細胞を半身だけ壊すなどして反応を比較。その結果から、コロ細胞が片方の命令を阻止する新たな信号を発し、立ち往生を防いでいると結論づけた。

 東島准教授は「逃げる方向を決めるのは脳自体の働きだと考えられてきたが、脊髄に重要な機能があることが分かった。哺乳(ほにゅう)類も同様の機能を持つ可能性があり、脳、神経の研究に新たな視点が開ける」と話している。

 

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