「安心できる医療とは」をテーマに開かれた第118回患者塾。会場などからの体験談を基に、医師の言葉遣いやインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の在り方などについて話が及んだ。
小野村さん (会場から)内視鏡の処置中に医師から「すみません」と言われて、何か失敗でもしたのかと感じて不安になった、という意見がありました。
伊藤さん 患者さんの治療中に医師が「あっ」とか「すみません」などと言ってしまうと、患者さんはとても不安になります。その言葉によって患者さんの血圧が変動したりすることもあり、大変危険です。
「あっ」と言っても医療チームには何のことか分からないので、あわてずに「こう処置してください」ときちんと指示を出すことが大事。何の意味も持たない不安だけを与えるような言葉は、患者さんの前では発しないことが大切です。
小野村さん インフォームド・コンセントで、医師が何かあったら訴えられないようリスクを説明して、「もう説明した」という感じになりつつあるという患者さんの意見もあります。
伊藤さん 手術はうまくいく時もあれば、医師の技量とは関係なく、いろいろな要素が重なってうまくいかないこともあります。インフォームド・コンセントは、そういうことを説明した上で、「手術も頑張りますが、その後に起こったことに対しても一生懸命治療させていただきます。それでいいですか」という話なんですね。
患者さんにとってみると、自分たちも説明を受けたので、100%はうまくいかないことがあることは理解しました。ただ、術後の経過が思っていたよりも違う方向に行った時は、先生も一生懸命努力をして、患者や家族が満足できるよう頑張ってください、という話なんですね。
患者さんも「どうも納得がいかない、不安だな」という場合には「サインしてしまったから」ではなく、「もう一度説明を聞いてもいいですか」と言ってください。「迷っている時間はありませんよ」とせかす医師のインフォームド・コンセントは大きな間違いです。
小野村さん 72歳男性から「大腸がんの手術前の説明で、医師から『周りを傷つける可能性もある』と説明された。暗い気持ちになり、医師への信頼感もうせました」というお話をいただきました。
伊藤さん 誤解されやすく患者さんに不安を与える言い方だと思います。医師が説明すべきなのは、予想できる範囲で起こり得ることです。予期せぬ偶発的な出来事まですべてをあらかじめ説明するというのは困難だと思います。医師の明らかな不注意で起きてしまうような事故の内容は、あらかじめ同意を得ておく性質のものではありません。一応言っておこうと機械的に羅列すると、このような説明になるのではと思います。
==============
◆出席された方々
伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)
津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(水巻町)
仲野祐輔さん=八屋第一診療所院長(豊前市、外科)
小野村健太郎さん=おのむら医院院長(芦屋町、内科・小児科)
==============
◆第119回患者塾のご案内
テーマ 1部 手術をしないがん治療
2部 新型インフルエンザを予防する
とき 5月30日(土)午後2時半~6時
ところ 遠賀中間医師会館
遠賀郡水巻町下二西2の1の33
093・201・3461
がんが見つかっても、さまざまな条件から手術ができない場合や本人が手術を強く拒否するケースがあります。以前、それは「絶望的な状況」でした。しかし、医学は大きな進歩を遂げ、放射線治療や化学療法、温熱療法(ハイパーサーミア)などを併せて行うことで、手術に負けない結果を得られる可能性が出てきました。
また、誰にでもできるとっておきの新型インフルエンザ予防法を専門医が教えます。
==============
質問は事務局へ
〒807-0111
福岡県芦屋町白浜町2の10「おのむら医院」内
電話093・222・1234
FAX093・222・1235
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2009年5月26日 地方版