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新型インフルエンザ:「念のため」医師が機転 神戸の1例目高3、風邪の症状

 新型インフルエンザの国内感染の発覚は、1例目となった兵庫県立神戸高校の男子生徒(3年)を診察した神戸市内の男性医師(52)の機転だった。発熱、だるさ……。生徒に海外渡航歴はなかったものの、一抹の不安が脳裏をよぎった。「新型インフルエンザをまん延させてはいけない。念のために」。医師としての責任感に押され、市医師会を通じて、市に検査するよう訴えた。

 医師は診療所を開業し、神戸高の校医を務める。男子生徒にとっては10年以上の「かかりつけ医」だった。生徒は11日午後、医院を受診。発熱はなかったが、せきやのどの痛みを訴えた。薬を処方したが、「同じバレー部でインフルエンザの生徒がいる」と話していたことが気になった。

 生徒は翌日、再び来院。体温37・4度で全身の「だるさ」を訴えた。新型インフルエンザで、海外で同年代の多くの「高校生」が感染していたことがひっかかったが、生徒は海外渡航歴がなく、38度を超える高熱という典型的な症状もない。「風邪で間違いないだろう」。しかし、簡易検査の結果はA型陽性。市に検査を要望した。

 市環境保健研究所は15日午後、検体の検査を行った。午後9時半。ソ連型か新型インフルエンザか、どちらかであることを示す「H1」の反応が出た、と研究所から医師に連絡が入った。翌16日午前1時には改めて連絡が。患者第1号の事実上の「確定」だった。

 「弱毒性で症状が軽ければ、潜伏期に水際の検疫で見抜くのは難しい」。医師は指摘する。今回は「新型」を完全に否定する根拠が見当たらなかったため、検査をアピールしたという。医師は「新型インフルエンザは未知の領域。常に危機意識を持って対峙(たいじ)することが、われわれには求められている」と話した。【村上正】

毎日新聞 2009年5月23日 東京夕刊

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