2009年5月22日13時51分
【ワシントン=伊藤宏】チェイニー前米副大統領は21日、ワシントン市内で講演し、キューバ・グアンタナモ米軍基地内の対テロ収容所の閉鎖など、オバマ政権によるテロ容疑者の扱いについて、「米国民の安全を守る政府の役割からほど遠い」などと、厳しく批判した。
この日の講演は、オバマ大統領がグアンタナモ収容所閉鎖の方針を改めて訴えた演説の直後に、あえてぶつける形で設定され、新旧のホワイトハウスが互いを非難し合う異例の構図になった。ブッシュ前大統領はこの問題で沈黙を守っているが、チェイニー氏はこの問題で、オバマ大統領を繰り返し批判しており、両者の対立は深まっている。
チェイニー氏は、ブッシュ政権時代に用いられた「水責め」など、拷問に相当すると批判された厳しい尋問手法について「かたくなな態度のテロ容疑者への対応として、失敗を重ねた結果、用いられたものだ。合法的、不可欠であり、罪のない何千もの人々を救った」と強調。「厳しい尋問手法は、最も価値ある情報を持つテロ容疑者に限って行われた」と述べた。
さらに、グアンタナモの収容所閉鎖については「さしたる検討もなく、無計画なまま表明した。テロ容疑者を他国に移送すると言うが、受け入れる国はほとんどない。米国内に受け入れれば、米国民の税金が、そのために使われることになる」と指摘した。
その上で「オバマ政権は、グアンタナモを閉鎖すれば、欧州諸国から簡単に称賛を得られると思ったのだろうが、米国の国家安全保障と、正義の双方にかなう代替案を考え出すのは大変なことだ」などと批判した。