県北で最大の病床数があり、救急医療や周産期医療などで地域の基幹病院に位置付けられる深谷赤十字病院(深谷市)が、厳しい医師不足に陥っている。危機感を持った深谷市・大里郡医師会(清水巌会長)が、行政など関係機関に呼びかけた意見交換会が21日、市内で開かれた。
深谷赤十字病院では、耳鼻咽喉(いんこう)科に1人だけいた医師が6月末で退職することになり、7月から同科の診療を中止する。4月には心臓血管外科で3人いた医師が1人に減ったばかり。さらに別の診療科でも近く医師の減少が予定される。5月現在の常勤医師数は66人と、4年間で10人減った。1年半前からは506床のうち47床を休床している。
意見交換会では、諏訪敏一院長らが、医師の減少で救急患者の受け入れ減につながっている現状を説明。特に半減して3人になった小児科は「来年は1人になるかもしれない」とした。医師会側も「地域全体で医師が足りず、妊婦の受け入れ拒否がいつ起きてもおかしくない」と訴えた。
新井家光市長は、▽安易な救急搬送の抑制▽地域内の県立病院の充実▽隣接の群馬県を含めた広域的な医療圏の設定--などの対応が必要だとの認識を示した。出席した県議らも県への働きかけに努めることに同意した。
同医師会の金子勝担当理事は「病院が患者の受け入れがままならないほど深刻な状況であることを住民は理解していない。病院が抱える課題を地域で共有することが出発点」と話している。【金沢衛】
毎日新聞 2009年5月22日 地方版