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特集社説2009年05月21日(木)付 愛媛新聞

検察審査会法改正 市民感覚を生かした監視を

 刑事司法の大変革となる裁判員制度がスタートするきょう、市民が検察官の起訴・不起訴の判断の是非を問う「検察審査会」の権限を強化する改正法が施行される。
 審査会は選挙人名簿から無作為に選ばれた十一人で構成する。検察官が起訴しなかった事件に対し、告発人や被害者の申し立てがあれば、処分内容を審査する制度だ。県内の審査会は松山地方裁判所と大洲、西条、今治、宇和島の各支部内にある。
 司法への国民参加として、裁判員に先駆け六十年以上の歴史がある制度だ。が、これまで議決に強制力はなく「民意の反映」という趣旨が十分に機能してないとの指摘があった。
 二〇〇八年に百三十人が起訴相当あるいは不起訴不当とされたが、再捜査で起訴されたのは数十人にすぎない。
 こうした反省から、法改正で「起訴議決制度」導入が決まった。議決に法的拘束力が付与され、検察官だけに認められていた起訴の権限を市民も有することになる。被害者救済の道を広げる画期的制度として注目される。
 具体的には審査員八人以上による「起訴相当」の議決が二度続けば必ず起訴される。最初の起訴相当議決で検察官が不起訴処分、または三カ月以内に起訴しなかった場合に二度目の審査を実施。あらためて起訴相当の判断が出れば、裁判所指定の弁護士が被疑者を起訴する仕組みだ。
 思い起こされるのが兵庫県明石市の花火大会で子供を含む十一人が死亡した二〇〇一年の歩道橋事故だ。
 神戸地検が明石署の当時の最高責任者らの立件を見送ったことから、遺族は神戸検察審査会に二度申し立てた。いずれも「起訴相当」で、改正法では起訴されるケース。結果的に地検は不起訴処分の判断を変えなかった。
 裁判を通じて事故の真実を知りたいというのは被害者や遺族の当然の気持ちだろう。裁判の入り口で門前払いしては検察への不信感を生むだけだ。
 確かに「起訴イコール有罪」と見られがちな現状では、確実な証拠がなければ検察が起訴に踏み切れない面はあろう。裏を返せば起訴を回避する背景に100%に近い有罪率の維持を優先する消極的発想も指摘される。だからこそ起訴判断に市民の常識が反映される意義は大きい。
 特に警察や政治家、行政などが被疑者となる事件で、検察審査会のチェック機能が期待される。
 ただ検察審査会の存在は一般にはあまり知られていない。審査の詳細も明らかにされない。国民に信頼される開かれた司法制度のためにも、一定の審査過程の公表も必要だろう。

   
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