●遠藤憲一の当たり役になりそうな「湯けむりスナイパー」がイチ押し
なんてったって、今期イチ押しは「湯けむりスナイパー」(テレビ東京)で決まりだ。元殺し屋の旅館従業員・椿屋の源に扮する遠藤憲一は、連ドラ初主演にして最強の当たり役を手に入れた。非情な殺しっぷりと、静かに庭を掃く姿。常に漂う虚無感がカッコいい。欲情ジジイに男の業を感じ取るきまじめさもグッときた。勧善懲悪の爽快さに、もちろんお色気も。週末の夜は、娯楽の王道にどっぷりつかり、浮世の憂さを忘れましょうよ。
初回視聴率1位の「BOSS」(フジテレビ)はデキるバリキャリな天海祐希の痛快さも、プロファイリングや交渉術で事件解決、というのも既視感たっぷり。そのため、陰気くさい戸田恵梨香(ハマリ役)や男尻好きのケンドーコバヤシなど、濃いキャラを生かしきれていないのが残念。
同じ刑事ものでも「臨場」(テレビ朝日)は、検視官の仕事を細部にこだわって描く。丹念な検視で捜査の横暴を止める。内野聖陽扮する倉石検視官は、ずさんな捜査が生む冤罪に警鐘を鳴らす。
今期は「婚活」ものも。いつまでも結婚しない職場の女性社員の心理は「コンカツ・リカツ」(NHK)を見て勉強しよう。ただし、国生さゆりや清水美沙など、演技が全員痛々しいのは覚悟して。逆に男性を主人公にしたのが「婚カツ!」(フジテレビ)だが、中居正広の草食系男子に異論。もう“男子”ってトシじゃないし、ナヨっぽさも見かけ倒しだし。ただ、雇用問題や父子の反目など、豊富なサブテーマを用意し、話に厚みを持たせている。転んだときの保険、ってこと?
●金のためなら女の足もペロペロ「夜光の階段」はグー
思いのほか大人の視聴者を意識した作りなのが「ぼくの妹」(TBS)。金に目ざとく、ふてぶてしい長澤まさみと、情けないオダギリジョーという新鮮な役どころが見もの。オダギリのナレーションで心象説明を片づける(脚本=池端俊策)あたり、“ドラマのTBS”的な懐かしさを覚える。ゆったりしたテンポながら、カギを握る女が初回に自殺したり、起伏に富んだ展開は期待できる。
金のためなら室井滋の足だってペロペロする「夜光の階段」(テレビ朝日)の藤木直人は大したもの。この調子で野望と色欲を濃密に描くべし。
最後に異色作「漂流ネットカフェ」(毎日放送/TBS系)を。雨宿り先のネットカフェが、一夜明けたら何もない林の中に。とんでもない展開と裏腹のたわいない会話や、ヒロインKIKIのエキセントリックな表情を楽しんでほしい。
(日刊ゲンダイ2009年4月30日掲載)