今年は季節性インフルエンザの流行が長引いている。専門家の間では「新型インフルエンザが季節性インフルエンザと混同され、見逃された可能性がある」との指摘が出ている。
国立感染症研究所(東京都新宿区)は、全国5000カ所の小児科・内科を定点医療機関に指定し、そこで発生したインフルエンザは毎週集計している。日本の季節性インフルエンザは例年、12月から4月ごろまでが流行期間とされているが、今年は流行が長引いている。4月下旬(20~26日)の1定点あたりの発生は3・51件で、過去5年間の平均値を0・92件上回っている。
元世界保健機関鳥インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員長の菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長は「この時期にA型インフルエンザ患者が多いのは不思議だという声を、首都圏の医師から聞いた。ある病院には入院患者もいたという。しかしこれまでの監視システムでは、定点医療機関以外では患者に渡航歴がなければ遺伝子検査まではしない。精密に調べれば新型の感染者は首都圏でも見つかるだろうし、同様のケースはたくさんあるはずだ」と指摘する。
インフルエンザに詳しい外岡立人・元小樽市保健所長は「新型の臨床症状は季節性と似ているため、新型と分からないまま一般の医院で治療された可能性がある」と言う。米国では、一般の医療機関から提出されたウイルスの株を検査機関が調べ、新型インフルエンザかどうか調べる仕組みがあるという。外岡元所長は「今回はたまたま、神戸の医師が提出した検体を調べたから新型と分かった。感染は関西だけの問題ではない」と話している。
毎日新聞 2009年5月18日 東京夕刊