取材を担当する奈良盆地南部で車を運転していると、東に三輪山、西に二上山、南に吉野の山々が望める。特に親しみを感じるのが二上山だ。
郷里の富山県には、同名の二上山(274メートル)があり、幼いころから何度も訪れた。奈良時代、越中の国司として赴任した大伴家持(やかもち)は、富山で二上山を題材にしたものなど約220首を詠んだという。家持は5年しか滞在していないが、富山での人気は高く、家持にちなんだお菓子や銅像が何基かある。
夕日を背にした奈良の二上山を眺めていると、望郷の念にかられてきたが、残念ながら一首も浮かばない。奈良での記者生活で、感性も磨いていきたい。(高島)
毎日新聞 2009年5月17日 地方版