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追跡京都2009:府営京都向日町競輪場事業 問われる「存続」 /京都

 ◇ファンの減少、施設の老朽化…検討委「議論深めたい」

 府営京都向日町競輪場(向日市)の事業について、府が有識者で構成した検討委の議論が始まった。1950年の開設以来、収益を府の一般会計に繰り入れるなど地域に貢献してきたが、近年はファン減少で低迷。施設の老朽化もあり、存続自体が問われている。21日開かれた検討委初会合での報告をもとに経過と現状を整理する。【太田裕之】

 「収益事業として府財政に非常に大きな貢献をしてきた」。検討委の開会のあいさつで府の太田昇総務部長は強調した。

 競輪事業は車券売り上げの75%を的中者に還元し、25%で管理運営を賄う。その残りが収益で、府の一般会計への繰り入れは99年度までに計445億円。ピーク時の74、75年には年間28億円を超え、当時の府立医大への一般会計からの繰り入れ分を賄えたという。65年度からの向日市への「周辺環境整備事業交付金」も約25億円。約5・7ヘクタールの敷地は府所有で400メートル競走路があり、スタンド収容人員は約2万人。71年度は72日のレース開催で97万人の入場を記録した。

 だが、その後は客足が年々減少。売り上げがピークだった90年度と08年度を比較すると、入場者は57万人から16万人と71%減、売り上げは355億円から155億円と56%減となった。

 低迷は全国的な傾向だ。全国には47の競輪場があるが、91年度と08年度の比較では入場者は70%減、売り上げは59%減。「レジャーが多様化し、ギャンブルをする若い人が減っているのでは」と府の担当者は話す。06年12月の来場者アンケートでは50代23%、60代43%、70代26%。40代は5%で、30代以下はわずか3%だった。

 府はイメージと収益のアップを図るため、さまざまな取り組みをしてきた。敷地内の会館やスポーツ設備(陸上、卓球、テニス、野球、サッカーなど)を市民に無料開放し、朝市などのイベントも開催。収益面では他の競輪場での車券販売や、逆に他の競輪場の車券の販売受託を可能な限り拡大してきた。

 98~02年度は5年連続で単年度収支赤字だったが、こうした経営努力により03年度に黒字を回復。一般会計への繰り入れも00~08年度はゼロだったが、09年度は10億円を見込んでいる。

 だが、入場者・売り上げが好転する展望がある訳ではない。スタンドや投票所、売店など施設の多くは昭和40年代建設で、存続するには大規模修繕や建て替えで多額の費用が見込まれる。また、市中心部という立地に、市が08年度に実施した市民アンケートで「渋滞する」「信号無視や飲酒しながら歩く人で、あまりいい気がしない」など否定的で廃止を望む声が、肯定・存続派を上回った。

 そんな状況下で設置された検討委は、大学教員2人、公認会計士1人、弁護士1人、企業経営者1人と市推薦の2人(市商工会長と社会保険労務士)の7人で構成。初会合では「ファンは減っており、競輪をやっている限り元には戻らない。存続は大変難しい印象」「サッカー場など他の使い方を求める声がある」「若い人が魅力を感じてない以上、数年後にはもっと減る」など否定的な声が続出した。

 一方で「競輪は本来的に面白いスポーツ」「環境問題で見直されている自転車としてPRしてはどうか」との意見も出た。府も電話やインターネットによる車券販売の拡大や記念レース開催など、売り上げを伸ばす余地はまだあるとみている。

 競輪事業を継続するのか、廃止して別の活用の道を探るのか、あるいは別の事業との併存など第三の道があるのか。検討委は今後、現地を視察し、選手団体や従業員、地元自治会など関係者から意見を聴く予定だ。委員長の田中敦仁・関西学院大法学部教授(公共政策)は「まずは現状を認識し、理解を深めてから議論を深めたい」としている。

毎日新聞 2009年4月26日 地方版

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