新型インフルエンザの発生以来、街でマスクを着けている人を見かけるが、少数派のようだ。私自身も正直、混雑した電車や繁華街以外では、着けるのをためらってしまう。この連休に家族を連れて関西を旅行し、子供らにも人込みでマスクをさせたが、その目は「ほかの人たちはしてないんだけどなあ……」と語っていた。
今のところウイルスは弱毒性とされている。しかし、豚のウイルスが変異して人から人への感染力を獲得したように、今後、毒性が強まる可能性も十分にあると専門家は指摘する。弱毒性のままでも、病弱な人や医療体制の整わない途上国の人たちには脅威だ。
とすれば、治療薬の普及や安全なワクチンの開発のために、できるだけ感染拡大を抑えて時間を稼がなければならない。マスクや手洗いは、そのための有効な手段だと考えたい。【平野幸治】
毎日新聞 2009年5月15日 地方版