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派遣法の改正を求め声をあげる集会の参加者たち=14日夜、東京・日比谷公園、林敏行撮影
労働者派遣法の改正をめぐり、市民団体や野党の動きが活発化してきた。派遣労働者の大量失職が続くなか、14日夜には東京・日比谷で派遣法の抜本改正を求める集会が開かれた。野党各党も、政府案より規制をさらに強めるよう、共闘の動きを加速させているが、国会での審議は先送りされたままだ。
労働組合や市民で作る「労働者派遣法の抜本改正を求める共同行動」の集会には約千人が参加。「派遣切り」にあった人たちが次々に登壇し、今国会での法改正を訴えた。
昨秋以降、製造業で働く派遣労働者の解雇が相次いだが、現在は事務系派遣の人の雇い止めや解雇も深刻になっている。多くは仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型」派遣だ。
全国ユニオンの鴨桃代会長が「製造業派遣だけの問題ではなくなっている。登録型派遣全体の見直しを実現させなくてはならない」と話した。
また、主催者の一人である日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士が「派遣法は労働者の分断を生み出している。現在の政府案ではなんの解決にもならず、ぜひ野党に政府案と対抗する案を出してもらいたい」とし、登録型派遣の原則禁止こそ、多発している「派遣切り」の抜本的な解決につながると訴えた。
集会に参加した伊藤みどり・働く女性の全国センター共同代表によると、1月からこれまでに解雇や処遇の悪化などの相談が昨年同期の約2倍も寄せられている。派遣法施行時は、パートよりも高い賃金だった専門業務の派遣も、現在は低賃金化、細切れ契約が大半だ。「専門業務の範囲の見直しも必要」と話した。
派遣法の改正をめぐっては、野党の動きも目立つ。今国会の会期末(6月3日)を控え、「まともな野党案が出ないと、政治は何をやっているんだと問われかねない」(福島・社民党首)ためだ。
民主党は13日、共産や社民、国民新党が求めてきた登録型派遣の原則禁止を打ち出した。これまで経済や雇用に与える影響を懸念し、規制に慎重だったが、野党間の共闘を重視して方針を転換した。
13日には、社民党と国民新党も、民主案よりも厳しい改正案の要綱を発表した。国会内で会見した国民新党の亀井亜紀子参院議員は「派遣切りが社会問題になるなか、野党案が出ないのは非常に問題だ」と指摘。今国会中の対案提出を目指す。
政府は昨年11月、日雇い派遣の禁止を柱とする派遣法改正案を国会に提出したが、審議は先送りされている。野党案が出れば事態が動き出す可能性はあるが、会期が延長されても審議時間は限られる。雇用情勢の悪化が続くなか、立ち遅れ感は否めない。(林恒樹、諸麦美紀)