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記者の視点
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改正銃刀法が求める医師の診断書
所持許可で原則精神保健指定医に限定
2009.5.13
銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)が改正され、すでに一部施行されている。今年1月5日から、ダガーナイフなどのような刃渡り5.5センチ以上の「剣」(両側に刃がついた刃物)は原則として所持が禁止され、7月4日までに廃棄するなどの処分が必要になる。各地の警察署が無償で引き取ることになっており、警察庁ではポスターなどを通じ、早めの相談に向けたPRに力を入れている。法改正のこの部分は2008年6月に発生した秋葉原無差別殺傷事件がきっかけ。改正銃刀法が広く国民の関心を集めることになった。
一方、改正銃刀法には医師も大きな関心を寄せている。猟銃などの所持許可を申請する際に求められる診断書が原則、精神保健指定医によるものに限定されることになるからだ。
従来、この診断書を書く医師の専門性が問われることはなかったという。大きな社会不安を生じさせる事件の発生もあり、こうした現状に驚きを禁じ得ない。国民にとって、そして医師にとっても決して好ましい状況ではなかった。今年12月までの施行が見込まれており、事態改善に向け、医療関係者らの前向きな取り組みに期待したい。
●専門外の医師が大半
もともと警察庁が銃刀法改正に取り組むきっかけとなったのは、07年12月に発生した長崎県佐世保市スポーツセンター銃撃事件だった。事件発生を受け、同庁生活安全局長の下にプロジェクトチームを設置。銃砲行政に関する国民の安全・安心を確保していく観点から、幅広く銃砲行政全般について見直しを行う「銃砲行政の総点検」を実施し、08年4月に報告書をまとめた。
銃刀法では、精神障害者、認知症患者、アルコール中毒患者らは銃所持を許可できない欠格者と定め、各都道府県公安委員会は銃所持の許可・更新申請の際、医師の診断書で申請を行った者が欠格事由に該当しないことの確認を求めている。ただ、同プロジェクトチームの報告書によると、申請者が添付する診断書のうち、約98%は精神障害等を専門としていない医師によるものであったという。
●銃所持許可後の受診命令も
専門医以外の医師による診断については、地域医療の現場を担う医師からも、専門医以外の医師が初診の精神疾患患者や麻薬常習の有無を判断することは困難との声が上がっており、改善策が強く求められていた。08年5月の中国四国医師会連合総会でも話題に上り、島根県医師会が各県医の対応策を尋ねたが、具体的な対応策を取っているとした県医はなかったのが実態だ。
改正銃刀法には「許可の申請」について、「医師の診断書であって内閣府令で定める要件に該当するものを添付しなければならない」との規定が盛り込まれた。警察庁はこれを受け、診断書を作成する医師を内閣府令で「原則として精神保健指定医」に限定することにした。
診断対象の疾患については、<1>統合失調症<2>そううつ病<3>てんかん<4>自己の行為の是非を判別する能力や、判別に従って行動する能力を失わせる病気、またはこうした能力を著しく低下させる症状を呈する病気<5>認知症<6>アルコール、麻薬などの中毒者―を想定する。診断書には、それぞれ「該当しない」「慎重な検査を要する」「該当する」のいずれかを記載するように検討が進められている。
このほか、「自己の行為の是非を判別する能力や、判別に従って行動する能力がない者、またはこうした能力の著しく低い者」についても参考意見の記載を求める方向だ。
さらに改正銃刀法では、受診命令に関する規定を盛り込んだ。銃所持の許可後でも、必要に応じて医師の診断を受けるように命令できることになった。受診命令については、今年6月の施行を予定する。診断対象も許可申請の際と同じ病気・症状が想定されている。
ただ、許可申請の場合と異なり、受診命令では診断する医師を各都道府県公安委員会が指定することになる。具体的には、てんかんは日本てんかん学会の認定医またはそれに準ずる医師、認知症は日本老年精神医学会、日本認知症学会、日本神経学会、日本老年医学会、日本精神神経学会の専門医となる見通しだ。これら以外は精神保健指定医を指定することになる。(那須 庸仁)
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