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社会
<DNA不一致 19年目の足利事件>(中)開かずの扉 高いハードル続く 殺人の再審15年途絶え(5月11日 05:00)二〇〇八年二月十三日、宇都宮地裁。周辺の歩道を埋め尽くした大勢の視線が、正面玄関に向けられていた。駆け出してきた男性弁護士が広げたのは「不当決定」の垂れ幕。支援者から大きな落胆の声が漏れた。 無期懲役が確定して服役中の菅家利和受刑者は、約六年半前の〇二年十二月、宇都宮地裁に裁判のやり直しを求め再審請求。弁護団は菅家受刑者と犯人のDNA型は一致しないとする独自鑑定結果を提出していただけに、支援者らは再審決定を固く信じていた。 しかし、地裁は「(鑑定に使った)毛髪が菅家受刑者のものと裏付ける証拠がない」と鑑定の正誤についての判断を避けた。 再審のハードルの高さが、改めて浮き彫りとなった瞬間だった。 再審とは、誤った有罪判決が確定した場合、その判決を見直す審理を開始する救済裁判。だが判決を覆す明白な新証拠が必要とされ、「開かずの扉」とも称されていた。 ■新証拠に厳しく 一九八○年代には確定死刑囚四人が再審無罪となったが、「榎井村事件」(九四年、高松高裁)以来、殺人事件での再審開始は途絶えている。新証拠を厳しく見極める司法判断が定着しつつあり、「冬の時代」に逆戻りしたとも指摘される。 再審開始決定が出ても、まだハードルはある。検察側の異議申し立てや最高裁への特別抗告で、決定が取り消されるケースもある。 六一年に三重県で五人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」は二〇〇五年にいったん再審開始が決定したが、いまだ実現していない。 ■「要件10分足る」 元最高検検事で筑波大の土本武司名誉教授は今回の「不一致」を「菅家受刑者の犯人性が大音響を立てて崩れたということ」と表し「再審の要件を十分に満たすし、相当の確率を持って無罪に近づいた」と分析する。 今回の鑑定結果を受け、検察、弁護側双方は六月十二日までに意見書を東京高裁に提出。その後も、鑑定人尋問、自白の信用性を評価するための本人尋問などが想定される。 しかし、弁護団は、直ちに再審開始を望んでいる。再審の扉が見えるのはいつなのか。果たして、扉は開かれるのか。 [写真説明]再審請求の即時抗告審が進む東京高裁。DNA再鑑定の不一致を受けて菅家受刑者の再審を認めるのか注目が集まる=8日午後、東京都千代田区霞が関1丁目
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