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社会

<DNA不一致 19年目の足利事件>(上)らせんの真実 最先端鑑定に高い信用 弁護側、異論排除に自信

(5月10日 05:00)

 足利事件再審請求のDNA再鑑定で、菅家利和受刑者(62)と被害女児の下着に付着したDNAが一致しなかったことが明らかになった。再審の公算が大きくなる中、再鑑定の成果や再審への道筋、関係者の衝撃は。事件は二十年目を目前に、新たな局面を迎えた。

 ◇  ◇

 下野市の自治医大地域医療学センターの一室。一畳ほどの大きさの「超低温槽」が目を引く。氷点下80度での冷凍保管が可能で、鑑定試料などの劣化を防ぐ。被害女児の半袖下着は二〇〇四年から四年間、ここで保管されていた。

 鍵となる半袖下着の状態について、問題点が指摘されていた。冷凍保管以前、十四年間にわたり、常温で、茶封筒などに入れられ、警察署や裁判所のロッカーに置かれていた。

 「半袖下着から採取したDNAは、犯人のものなのか」。再鑑定結果に対しても疑念がくすぶる。第三者のDNAが付着した可能性はなかったのか。

 ■常温で50年可能

 弁護団によると、弁護側推薦の鑑定人は、その可能性も勘案し、半袖下着の表面ではなく、繊維の内部から体液を抽出。複数の個所から同一人物のDNAを採取した。弁護側は、犯人のDNA型を特定した、と胸を張った。

 劣悪な環境下での長期保管について、日本大の押田茂實教授は「現在の鑑定法であれば常温で五十年間保管されていても、可能」と今回の鑑定法の高い能力を認める。

 裁判所から委託を受けて半袖下着を冷凍保管していた自治医大の岩本禎彦教授(人類遺伝学)は、犯人以外のDNAを鑑定した可能性は完全には否定できないとした上で、再鑑定の信用性を評価。「双方の鑑定人が複数の個所から犯人のものと思われるDNAを抽出した。今回、(菅家受刑者のDNA型と)一致しなかったDNAが、犯人のものである可能性のほうがはるかに高い」と説明する。

 では一九九一年に実施された警察庁科学警察研究所(科警研)のDNA鑑定はなぜ一致したのか。

 ■肉眼でも「別型」

 弁護側推薦鑑定人は鑑定書で「肉眼でさえ、同じ型とは判定できない」と鑑定技術の低さを痛烈に批判した。

 九七年に"不一致"の独自鑑定を最高裁に提出していた押田教授は「当時の最高裁が再鑑定をしていれば分かったこと」と怒りは消えない。

 不一致を受け、窮地に立たされた検察側。鑑定結果をどう、受け止めるのか。六月十二日までに提出する意見書に注目が集まる。

 [写真説明]2004年から今年1月まで半袖下着が冷凍保管されていた自治医大の超低温槽。試料の劣化を防ぐため、氷点下80度に保たれている=9日午前、下野市薬師寺

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