2006年02月21日

ホスピタリティとゴルフの精神

「一流のツアープロでもナイスショットと言うよ。言われたら有り難うございますと必ず言うよ、なぜだか分かるか?」
このブログはホスピタリティ・ブログです。なぜプロゴルファーでも「有り難うございます」と言うのか、その訳をいつか述べてみたいと思います。ホスピタリティの精神とゴルフの精神にはかなり共通点があることをご理解いただけることと思います。

10月7日 教えてもらえるということ でこのように書きました。
遅くなりましたが、今日はホスピタリティとゴルフの精神について書いてみたいと思います。


まずは、オリンピックのメダリストがゴルフ番組のインタビューで語ったことから。

レポーター「ずいぶん叩いていたようですね?」(成績が良くないという意味です)
○○選手 「スコアーは付けていませんから・・・」
残念ながらこの選手は、ゴルフというスポーツのマナーやルール、その精神を誰からも教えてもらっていないようです。

第一に、一緒にプレイした人にスコアーを報告するのがゴルフです。スコアーを報告していなかったということは、ゴルフをしたことにはならないのです。スコアーを付けないことは、自分とも闘っていない、パートナーとも闘っていない「恥ずべき行為」ということなのです。

確かにゴルフは「個人プレイ」です。野球やサッカーのようなチームプレイではありません。
それでもゴルフは一人では決して成り立たない競技なのです。18ホールをパートナーと一緒に回ることがゴルフであるということなのです。

さてここでゴルフをされない方にもぜひ知って頂きたいことがあります。
それは、ゴルフのプレイヤーは、常にいくつかの困難と闘っているということです。

一つ目は「コース」との闘いです。バンカーなどのハザード(障害物)や雨、風などの気象条件は、スコアーメイクを困難にします。

二つ目は「自分自身」との闘いです。
誰でも「相手に勝ちたい」「ベストスコアーを出したい」という気持ちは持ってプレイします。
しかしながら、そのためなら何でもやっていい訳はありません。

基本となるルールを守らなければいけないのはあたり前ですが、ゴルフにはサッカーなどと違って「ファール」「イエローカード」などに象徴される「軽微な反則」「グレーゾーン」は存在しません。
正しいかペナルティか、○か×だけなのです。

そして、その ○か×か を決めるのは、プレイヤー自身であることがゴルフの奥深いところです。

林に打ち込んだボールをほんの少しでも動かす行為や、ボールの後ろの芝を足で踏みつけ、ボールを打ちやすくする行為などは決して許されないのですが、広いコース内では誰一人見ていない場合も多いもの、ちょっとした「出来心」が生じることもあります。

そんな時「自分の良心」との闘いが生まれるのです。
「×の誘惑に負けてはいけない」という自分との闘いであるということです。

自己申告であるスコアーをごまかす行為(×を○として申告)などはもってのほかです。
サッカーのファールなどと異なり、長く後悔することになるのです。

ゴルフ川柳より
●コースに出てから30年、未だに悔いる過小申告

最後は「ゴルフの精神」との戦いです。

ゴルフの精神とは
「どんなときでもプレイヤーは礼儀正しさとスポーツマンシップを常に示しながら、洗練されたマナーで立ちふるまうべきである」というものです。

前述しましたように、ゴルフは個人競技ですが一緒にプレイをする同行者が必ず存在します。

メンバーが友人たちの場合でも初めてお会いする方でも、非日常的な時間とコース(場所、空間)を共有するのですから、「同行者への良心」も大切にしなくてはいけません。

この「同行者への良心」とは、ルールやマナーの根底にある思考基盤「人間関係を良くするホスピタリティ・マインド」と言ってもよいでしょう。

それではなぜ、ホスピタリティ・マインドが必要なのでしょうか。
それは、ゴルフは「失敗するスポーツ」であるからです。

深いラフに負ければ失敗します。使用するクラブの選択や風向きを誤れば失敗します。

さらに、ゴルフコースには、ゴルファーの失敗を誘うための様々なハザードが意図的に用意されています。
つまりプレイヤーがゴルフコースに出るということは「失敗をしに行く」ということです。
アンダーパーで回るプロゴルファーでも必ず失敗をしています。
ゴルフを「失敗させるスポーツ」と言っても過言ではないのです。

一つの失敗をどのように乗り越えるか、ゴルファーは「大いなるゴルフの精神」からためされていると言ってもよいでしょう。

失敗した後「くさる」人を見かけます。
物やコースに「八つ当たり」する人もいます。
「自分との闘い」に負け、失敗をごまかす人もいるでしょう。

不機嫌になったり、自分に負けたりすることは、一見個人の勝手のように思われますが、それはゴルフの精神や「同行者への良心」に反する行為です。絶対にしてはいけないことなのです。

一方で、同行者は失敗した人が立ち直れるように、「ナイスリカバリー」「ナイスアウト」「ナイスボギー」などの「ほめ言葉」を発することがゴルフのマナーになっています。

失敗するのがあたり前であり、失敗した人は消沈するのはあたり前、失敗から「脱出」できたらほめ合うのもあたり前なのです。

ホスピタリティとは目の前の人への「手助け」「こころ助け」が基本です。

ゴルフはメンタルなスポーツと言われますが、一緒にコースを回る人たちが一時も早く失敗の消沈から脱出するように助ける、ナイスショットをしたらほめる、もちろんほめられた人は「有り難うございます」とお礼を言う、人間としてあたり前のことです。

これはツアープロでも必ず行っています。
もちろん、ナイスショットの都度頭を下げ「ありがとうございます」とは言いませんが、手を挙げたり、帽子を触ったりというアクションが、まさに助けてくれた、励ましてくれたことへの返答なのです。

ゴルフ川柳より
●ゴルフの最大のペナルティは、二度と誘ってもらえない事だ。

紳士、淑女のスポーツであるといわれるゴルフの奥深さ、そしてゴルフの精神とホスピタリティの関連性、少しだけでもご理解いただけたとしたら望外の幸せです。