2009年5月8日3時3分
雇用対策の一環として、失業した日系ブラジル人やペルー人の希望者に帰国費用の一部を負担する帰国支援事業を国が4月から始めた。だが定住資格による再入国を認めない、との規定があるため、「排外的な『手切れ金制度』だ」との批判が国内外から相次いでいる。
この事業では、1人あたり30万円、扶養家族には1人あたり20万円を給付する。雇用保険の受給期間中なら上積みもある。厚生労働省によると、4月の1カ月間で1095人が申請した。
ところが、国内で最もブラジル人が多く住む浜松市にある支援団体「ブラジルふれあい会」によると、失業状態でも敬遠する人がほとんどだという。厚労省の発表では「支援を受けた者は、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国を認めない」と書かれているからだ。
批判は海外からも相次ぐ。
ブラジル国営通信によると、ルピ労働相は4月27日、「両国の歴史的関係にそぐわない」と見直しを求める書簡を日本政府に送った。英BBCのポルトガル語版や米ニューヨーク・タイムズ紙も、批判的な論調で報じた。
厚労省は「当分の間」としたことについて「経済動向が不透明なためだ。日系人には手厚い支援をしており、帰国支援ばかり言及されるのは残念だ」。法務省は「希望者に渡すので追い出すためではない。安定した生活を送れない以上、少なくとも支援事業が続いている間は定住資格での入国は認められないことになる」という。
同様の制度を設けたスペインでは入国制限は3年間だ。またチェコでは制限を設けない代わりに、入国審査を厳格化しているという。(石田博士)