5月10日 来期も赤字を出すというトヨタの戦略は、おそらく相当凄いモノかと。二つの作戦を同時進行させてるんじゃないか、と予想してます。まず「生産体制の大幅な縮小を行わない」というもの。ここで縮小均衡すれば、確かに収益の改善も可能。ただそれを行ってしまえば、景気回復した時の商機を逃してしまう。
もう少し具体的に説明したい。今年のアメリカ市場を見ると最悪だ。本来なら不況下でも1300万台。良いときは1700万台という市場規模持つのに、今年は1000万台切れもあり得る状況。ただアメリカ市場のポテンシャルは下を見ても1400万台程度有ると考えます。加えてクライスラーやGMがシェアを落とす。
言うまでもなくクルマには寿命がある。早ければ来年後半。遅くとも3年後には1300台規模まで回復するだろう。一方、ほぼ全てのメーカーが縮小均衡策を選択したため、圧倒的な供給量不足になる可能性が大。こうなると困るの、お客さんです。トヨタはそうなった時のことを想定し、工場の閉鎖を行わず(ホンダも同じような選択をしている)。
もう一つは想像をはるかに上回る規模でのハイブリッド戦略を立てているだろうこと。5年後は大半の車種がハイブリッドになるハズ。その余波で、既存の車種の売れ行きが今年〜来年に掛けて落ちる予測をしているんだと思われる。実際、新型プリウスの価格を見ると「肉を切らせて骨を断つ」くらいの覚悟を感じます。トヨタだって無傷じゃ済むまいですから。
しかもハイブリッド車が潤沢に出回るの、コンパクトカー用のユニットを立ち上げる2011年くらいから。それまでは既存の車種の価格戦略などで乗り切るしかあるまい。その間の収益悪化もやむなしという判断か。間違いなく言えるのは、単に「濡れたタイルを絞る」ような既存の戦略でなく、抜本的な変化をしようとしてる、ということ。
こういった時の経営戦略の差で、伸びるか低迷するかが決まる。後世、きっと大きく評価されるだろう2年連続の赤字になると私は思います。
<過去のTOP記事はこちらでお読みください> |