舞鶴市で設置母体が異なる公的4病院を一つの組織に統合、再編するという全国でも例がない動きが進んでいる。市立舞鶴市民病院、日本赤十字社の舞鶴赤十字病院、国立病院機構の舞鶴医療センター、国家公務員共済組合連合会の舞鶴共済病院の四つ。市公的病院再編推進委員会(座長・浅井孝司副市長)は先月、4病院を一つの基幹病院といくつかの小規模なサテライトに集約し、1組織で運営する構想をまとめた。今後は、市が各病院の設置母体から合意を得られるかどうかがポイントとなる。経緯や課題を整理した。【珍田礼一郎】
◆一斉辞職
再編の大きな要因となっているのが医師不足だ。人口約9万人の市で、四つの大型病院という充実した医療環境を誇ってきたが、診療態勢の維持が困難になった。
04年3月、舞鶴市民病院で、内科医14人中13人が一斉辞職した。以後、民間委託を模索するが頓挫。常勤医の確保が困難となり、休止したり手薄となった診療科で患者が減り、病院経営を圧迫するという悪循環が続いている。病床利用率は08年度で18・1%と低水準。市は赤字補てんのため、09年度予算で9億6000万円を同病院に繰り入れる。
他の3病院も常勤医の不足で、診療科を休診や縮小させている。例えば、交通事故で重いけがを負い、脳神経外科や整形外科、神経内科を受診する必要があるとしても、医療センターは整形外科、共済と赤十字病院は脳神経外科と神経内科の常勤医がいない。チーム医療ができないのだ。
一方、4病院の常勤医師数は計106人(07年度)で、患者数が同じぐらいで病床利用率85・8%の京都第一赤十字病院の118人(同)と比較しても、そん色がなかった。そこで、市は「トータルで安定した医療を受けられる基幹病院への統合」を構想し始めた。
◆再編プラン
07年5月、齋藤彰市長の私的諮問機関「舞鶴地域医療あり方検討委員会」が発足。同11月の最終答申で、4病院を1、2施設に再編する方向が示された。
今年1月、市内の公的4病院長らが委員を務める市公的病院再編推進委を設置。府中丹東保健所長や舞鶴医師会長らも名を連ね、再編へ向けた実質的な協議を重ねた。
推進委は2回目の会議(今年4月)で、東地区に二次救急(入院や手術が必要となる医療)機能を持つ1基幹病院、西地区に療養機能を持つサテライト病院を設置することを目指すことで合意。基幹病院の規模は、4病院の急性期病床数1005床の病床利用率60・5%を反映し、500~600床程度。建物は既存利用と新設の両面から検討するとした。
◆設置母体と協議
市は「医師が四つの病院に分散している状態を解消したい」と必要性を強調し、先月下旬から東京都内の各病院の本社、本部へ出向いてプランを説明している。しかし、医師数の配分や派遣元大学をどうするのか、といった問題で利害は一通りではない。
新病院建設の場合は、資金も課題。市は約75億~198億円の建設費を予想するが、市が全額負担することは、一般会計からの多額の繰入金がある現状では議会からの強い反発が予想される。
市は各母体との協議を進め、早ければ年内に合意を取り付けたい考え。「1病院だけでは舞鶴地域の医療を担えないのが現況。他の病院があって安定した医療を提供できる。これは、どの病院も同じ」としている。
毎日新聞 2009年5月10日 地方版