充実医療へ難題山積 大野・双葉厚生の2病院統合

統合が検討されている福島県立大野病院(上)と双葉厚生病院
 福島県立病院改革プランの一環として昨年3月から模索されていた県立大野病院(大熊町)と、県厚生農協連合会(厚生連)が運営する双葉厚生病院(双葉町)との経営統合がようやく動き始めた。当初、今年3月末がめどだった地元自治体との合意は反対意見によって長引いたが、2年後の統合を目指し、今月中にも県や地元が参加する検討委員会を発足させることになった。だが地域の中核的な両病院をどちらも存続させる経営統合には、役割分担や医師確保など課題も多い。
(相馬支局・加藤敦、福島総局・熊谷吉信)

<「県の支援は必要」>
 両病院の地元双葉郡の8町村は先月17日、医療体制の充実などを条件に統合受け入れの方針を打ち出した。地元の要望は両病院合わせて現在18人の医師を25―30人程度に増員することと、計270の病床の維持。さらに地域救急医療の強化なども求めた。

 県から大野病院を移譲され、統合後に運営主体となる厚生連の大木哲理事長も「救急医療の充実などは、県がしっかりと支えてほしい」とくぎを刺す。

 だが深刻な医師不足の中で増員などの見通しは極めて厳しく、地元要望の実現は容易ではない。県の医療政策を担当する松本友作副知事は「時間をかけて地元が求める姿になればいい。早期に実現しようとすれば絵に描いたもちになる可能性もある」と率直に話す。

<県医大の動向も鍵>
 統合に向けた県と地元との話し合いでは、井戸川克隆双葉町長が「県は病院経営に最大限努力してきたのか。(最初から)統合ありきでは住民の理解は得られない」と強く反対して難航。県病院局の幹部が頻繁に現地を訪れ、水面下での交渉を続けたことで、なんとか合意にこぎ着けた。

 根強い反対論もある中で地元が「統合やむなし」に傾いた背景にあるのは、統合で中核医療機関として充実することへの期待。地元のある首長は「30分以上もかけて急患をいわき市などに搬送する状況もしばしばだ」と訴える。切実な状況が統合への不安や不満を抑え込んだ格好だ。

 「統合後の具体的な姿はこれから」と県や厚生連は説明するが、重複する診療科目の整理はもちろん、両病院の役割そのものも変化せざるを得ない。

 関係者によると、2つの病院の役割を「外来中心」と「入院中心」、または「急性期対応」と「緩和期対応」などに分けることが想定される。近く発足する検討委員会で議論されるが、地元が納得する形となるかどうかは不透明だ。

 円滑な統合には、医師の供給源である福島県立医大の動向も鍵を握る。「両病院とも医師が少なく、応援で互いに行き来していた。診療科目の整理などで医師の勤務環境も改善する。統合は基本的に歓迎だが、具体的な派遣数などは未定」。医大幹部の一人は話す。

 厚生連の大木理事長は「若い医師が来たいと思う臨床研修プログラムが組めるような環境をつくりたい」と将来像を描いている。

[メモ] 県と厚生連は2008年3月、大野病院と双葉厚生病院について経営統合も視野に連携することで合意した。6つある県立病院を3病院とする改革プランの一環。両病院はともに医師充足率が約7割と低迷、大野病院は慢性的な赤字に陥り、多くの診療科が重複している。経営統合への地元合意が遅れたことで県は、国から3月末までに提出を求められていた県立病院改革プランの提出を見送っている。
2009年05月10日日曜日

福島

政治・行政



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