2009年5月9日19時52分
誕生日と「放浪記」上演2千回を祝うケーキを贈られ、笑顔の森光子さん(中央)。左は近藤真彦さん=9日午後5時18分、東京都千代田区の帝国劇場、水野義則撮影
「2千回という回数はお客様のお陰で成立しているのです。心から御礼を申し上げます」。女優の森光子さん(89)が主演する舞台「放浪記」が9日、東京・丸の内の帝国劇場で行われた昼公演で通算2千回を迎えた。この日は森さんの誕生日でもあり、親交の深い芸能人らもお祝いに駆けつけた。
「放浪記」は林芙美子の同名小説が原作で、菊田一夫が脚本化した。恋に破れ、どん底生活を送りながらもひたむきに文学に打ち込む林芙美子役を、森さんはこの日も軽やかに、また情感豊かに演じ、約3時間の舞台をつとめた。
客席に向かって正座し、無言のまま3方向に感謝の「念波」を送る独特のカーテンコールが終わると、大きな拍手が起きた。タレントの近藤真彦さん、東山紀之さんらがステージ上に誕生ケーキとともに現れ、祝辞を述べた。
森さんは「ずっと待っていた2千回でしたが、来てしまうと、貴重な時間を割いて下さった皆様に申し訳ないような、いたたまれないような恥ずかしい気持ちです」と記録達成の感想を語った。「表現のもっと豊かな女優になりたい」とさらなる精進も誓っていた。
初演は61年。90年に山本安英さん(故人)の「夕鶴」(1037回)を抜いて以来、単独主演での上演記録を更新している。舞台では、喜びを表現する場面で森さんが披露する「でんぐり返し」も名物となったが、大事をとって08年に封印した。体力作りとして、今も毎日スクワットなどを続けているという。