ロシアとの紛争に揺れたグルジアが再び不穏な空気に包まれています。
2008年、ロシアとの紛争に揺れたグルジアが、再び不穏な空気に包まれています。国内では、軍の内部で反乱。野党勢力が機動隊と衝突する一方、NATO(北大西洋条約機構)の軍事演習の舞台となることに、ロシアが挑発行為だと反発しています。
グルジアでは、警官隊とデモ隊が衝突し、多くの負傷者を出すなど、今も政情不安が続く。
9カ月前にロシアが侵攻したグルジアで、5月6日からおよそ1,000人が参加して、NATO合同軍事演習が行われている。
ロシアは、挑発行為として即刻中止を求め、メドベージェフ大統領は「これは間違った危険な決定だ。(演習場所は)つい最近も緊張した状態が続いていた場所のすぐ近くだ」と述べた。
かつてソビエトだった国々が一斉に加盟し、東方へ拡大したNATO。
グルジアの加盟を許せば、ロシアは、足元まで迫られることになる。
こうした中、軍事演習前日の5日、グルジア軍部のクーデター計画が発覚した。
5日、グルジアの首都トビリシ近郊の軍基地で、機甲大隊の将校らが突然、不服従を宣言した。
グルジアのサーカシビリ大統領自らの説得で投降し、クーデターは未遂に終わった。
サーカシビリ大統領は、軍事クーデターは、軍事演習を阻止しようとするロシアの支援があったと指摘した。
サーカシビリ大統領は「ロシアに対して“警告”したい。グルジア領内で地域の状況を悪化させて緊張を高めるような行為を止めるよう」と述べた。
しかし、ロシア側はこれを否定した。
さらにNATOとロシアは、激しい神経戦を繰り広げていた。
NATOは4月末、機密資料に関連するスパイ容疑で、NATOとの連絡要員となっているロシア人外交官2人を国外退去とした。
一方のロシアも、モスクワ駐在のNATO職員2人を国外処分とする報復措置を取った。
ロシアのラブロフ外相は「“報復”を講じなければならない。モスクワ駐在の2人のNATO職員に国外退去を命じた」と述べた。
くしくも6日は、軍事演習が始まった日だった。
ロシア情勢にくわしい青山学院大学国際政治経済部の袴田茂樹教授は、「ロシアが一番神経をとがらせているのは、チェコとかポーランドなど、東欧諸国にNATOがミサイル防衛システムを配備をするという、そういう状況の下でグルジアにどうしてもそのロシア軍を置いて、『地域をコントロールしたい』という、『NATOの加盟を絶対阻止する』という、そういう姿勢を示しているわけです」と語った。
ヨーロッパへのミサイル防衛配備などで、「新冷戦」といわれるほど悪化した米ロ関係。
しかし、グルジア紛争後のオバマ大統領の誕生で、関係改善に向かっているように見える。
7日、訪米中のロシア・ラブロフ外相と会談したオバマ大統領は、関係改善に強い意欲を表明した。
オバマ大統領は「米ロ関係をリセットする素晴らしい機会だった」と述べた。
しかし、青山学院大学国際政治経済部の袴田茂樹教授は、違った見方をしていて、「オバマ大統領は、このロシアに対しては、かなり厳しい姿勢を変えておりません。したがって、一時の雪解けムードといいますか、むしろ、それが幻想であったというべきだと思います。NATOの拡大とか、ミサイル問題を軸にして、いろいろ緊張関係が今後も続いていくというふうにみたほうが、わたしは正しいと思います」と語った。
(05/09 02:00)