〔情報BOX〕北朝鮮の核兵器開発に関する現実的な脅威

2009年 05月 8日 13:55 JST
 
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 [ソウル 7日 ロイター] 7日付の韓国紙は政府筋の情報として、北朝鮮の核実験場での動きが活発になっており、数週間以内に核実験の準備が整う可能性があると報じた。北朝鮮は先に、国連安全保障理事会が制裁について謝罪しなければ、核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施すると警告していた。

 ◎北朝鮮の核兵器開発能力はどの程度か

 核爆弾6─8個を製造するのに十分なプルトニウムを持っていると考えられており、すでに初歩的な核爆弾1個を製造している。ミサイルに搭載できるだけの弾頭小型化は済んでいないとみられ、兵器専門家によると、小型化技術の開発には相当な回数のテストが必要。 

 また、北朝鮮軍が保有する旧ソ連時代の爆撃機では、日本の自衛隊機や米国や韓国の空軍機による攻撃を回避できないとみられることから、北朝鮮の核兵器が現実的に世界の脅威となるのは何年も先になる可能性がある。

 ◎核実験の実施までに必要な時間は

 北朝鮮は2006年10月に核実験を実施したと発表、それに対して国連安保理は制裁決議を採択した。専門家らは、新たな核実験の準備は数週間程度で整う可能性があるとみている。

 ただ、核実験の準備の兆候は米国のスパイ衛星で監視できることも多いため、北朝鮮は交渉を有利に運ぶための駆け引き材料としてそれを使う狙いがあるとみられる。一部の専門家からは、2回目の核実験は向こう数カ月は行われないとの声も聞かれる。

 ◎次の核実験の回数は1回以上か

 備蓄したわずかなプルトニウムを使い果たしたくないため、次の核実験は1回のみになるとみられる。それ以降の核実験については、6カ国協議を通じて無能力化されていた寧辺(ニョンビョン)の核関連施設の再稼動状況次第。同施設では、年間に核爆弾1個分の核分裂性物質を製造することができる。

 米国などは、北朝鮮が未申告のウラン濃縮プログラムを持っていると非難している。

 ◎安全保障上の脅威はどの程度か

 北朝鮮の核兵器プログラムは、製造能力や配備能力が完全ではないとみられることから、現時点では大きな脅威ではない。

 北朝鮮の軍事力で最大の脅威は、韓国全域と日本の大部分が射程圏内となる中距離ミサイル数百発と、韓国との国境付近に配備されている迫撃砲。

 防衛専門調査会社ジェーンズは、北朝鮮は韓国の全人口4900万人の約半分が住むソウルおよび近郊に、1時間以内に砲弾50万発を降らすことができる推定する。

 北朝鮮が生物兵器や放射性物質を搭載したミサイルなどで先制攻撃をすれば、日本や韓国の経済は大打撃を受け、世界経済にも深刻な影響が出る。しかし、その場合は米国主導の報復攻撃によって北朝鮮も壊滅的なダメージを受けるため、自殺行為とも言える。

 ◎北朝鮮の核関連施設は

 核兵器プログラムの中心は、平壌(ピョンヤン)から北に約100キロ離れた寧辺の核施設。そこには核燃料加工施設や原子炉、使用済み燃料の一時貯蔵施設などがある。ある情報機関筋によると、北朝鮮はほかにも、未申告の兵器開発施設やウラン濃縮施設を持っているという。

 ◎外交努力で北朝鮮の非核化は実現できるか

 恐らく難しいだろう。北朝鮮は過去何年も軍事的な脅威を使って大国からの譲歩を引き出しており、専門家らは、金正日総書記が最大の交渉カードを手放すことはないとみる。国際的にほぼ孤立する金正日政権にとって、核兵器だけが最後のよりどころになる。

 ◎核兵器拡散の脅威は

 北朝鮮から核兵器が拡散する可能性は現実的な脅威だ。ブッシュ前米政権は、北朝鮮が核開発プログラムでシリアを支援していたとみていた。

 たとえ北朝鮮の核兵器開発が専門家の指摘する「時代遅れの技術」に基づいているとしても、核燃料サイクルを確立した北朝鮮が、兵器目的のプルトニウム製造を目指す国家に核の専門技術を売る可能性は否定できない。

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