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/ 2001.5.13(日)
更新
5月14日付・読売社説(1)
[国籍取得特例]「『外国人参政権』に幕下ろす時だ」
自民、公明、保守の与党三党は、日本国籍を取得する際、特別永住者に限って現行の許可制から届け出制とする、「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法案」(仮称)を五月中にも国会に提出する。
国籍取得に平均一年を要する現行制度に特例を設け、届け出るだけで直ちに日本国籍を取れるようにするものだ。
定住外国人が日本国籍を取得すれば、国への帰属意識や一体感を共有し、共同の責任意識を持って国や社会の活動に参画することにつながる。
グローバル化が進む中で、定住外国人が日本国籍を取得しやすくすることは、日本をより開かれた国とする上でも、当然の流れだ。
野党も異論はあるまい。できれば超党派で、今国会中に成立させるべきだ。
特別永住者とは、朝鮮半島や台湾などの出身で、サンフランシスコ講和条約発効によって日本国籍を失った人および、その子孫である。九九年末で、五十二万人余に上る。
旧植民地の朝鮮半島や台湾などの出身者の日本定住には様々な歴史的事情がある。特別永住者への特例措置とされたのは、その「歴史的経緯」と「日本社会での定住性」への配慮からだ。
日本国籍をとる際には、姓名に「姜」「鄭」のような漢字を使うことも認められる。日本国民となっても、例えば「韓国系日本人」としてのアイデンティティーを尊重することが大事だ。
今後は、一般永住者の国籍取得の要件や手続きの緩和も検討が必要だろう。
国籍を取得すれば、当然、国政、地方を問わず、参政権を持つことになる。公明、保守両党や民主党が提出している永住外国人への地方参政権付与法案の問題もおのずと解決する。
永住外国人への地方参政権付与は、公明党の主張で、九九年秋の自自公三党の連立合意に盛り込まれた。公明党は、今国会での採決を求めている。
しかし、自民党内では「憲法上も、国のあり方という観点からも問題が多い」として、慎重論が強い。小泉首相も同様の姿勢だ。
民主党でも、有志議員グループ「外国人地方参政権を考える会」が、「地方参政権を持つには日本国籍の取得が前提」として、党の方針に反対している。
永住外国人の地方参政権付与に賛成する意見書採択の動きがあった地方議会でも、次第に慎重論が広がっている。
地方参政権付与法案は撤回または廃案とするべきだ。外国人地方参政権の論議に幕を下ろす潮時である。
(5月13日22:00)
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