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揺れる大阪中郵 きょうから移転営業 専門家ら「保存、市民運動を」 日本郵政は建て替え譲らず

保存議論が持ち上がるなか移転先で営業を開始した大阪中央郵便局=大阪市北区(竹川禎一郎撮影) 局舎の保存議論が持ち上がっている大阪中央郵便局。7日は移転に関連したイベントなどは行われなかったが、午前9時の営業開始とともに社員が整列し、「いらっしゃいませ」などとあいさつ。社員十数人が店頭に出て、利用者に対し新しい窓口の案内などを行った。

 新局舎が完成するまでの“仮住まい”だが、貯金の入金に訪れた大阪市北区の自営業、八谷英京さん(59)は「古い建物なので多少は残してほしい」と話した。一方、移転を知らずに旧局舎を訪れた利用者も。

 大阪市福島区で会社を経営している男性(61)は「会社関係の振込みに訪れたが、全然知らなかった。子供のころから知っている建物がなくなるのは寂しい」と話していた。

 移転して営業を始めた大阪中央郵便局の建て替えについて、日本郵政側は「現在はまだ設計の検討中」と強調、予定通りの平成24年中の完成を目指すとしている。このため保存を求める専門家らは「全部保存につなげるため市民の熱意を盛り上げていきたい」と話している。

 「大阪の場合、当初から保存部分は『特徴ある部分を残す』と発表している。現状は設計段階のため発注や着工はしていない。凍結や見送りなどの状態にはなっていない」

 こう話すのは、日本郵政コーポレート・コミュニケーション部の担当者。東京中央郵便局の建て替え工事をめぐる鳩山邦夫総務相の発言で熱を帯びた郵便局舎の保存問題だが、大阪中郵の建て替えは予定通りと強調する。

 日本郵政では19年10月の郵政民営化に伴い、保有不動産の有効活用を進める見地から建て替えを計画。同社とJR西日本が共同で、通路などに現局舎の一部を活用しつつ、地上40階地下3階の複合高層ビルを建設。下層階に郵便局、中層部にはオリエンタルランドが劇場を開設、高層部はオフィスフロアとする予定だ。

 大阪中郵の現局舎は昭和14年、東京と同じく旧逓信省職員の吉田鉄郎氏が設計。柱の一部を花崗(かこう)岩の礎石に乗せるなど日本の伝統的建築様式を踏まつつ、上層階ほど窓を小さくして見上げたときに高く見えるようにデザインするなど意匠が凝らされ、近代モダニズムを代表する建築物として評価が高く、専門家の間から建て替えに反発が強まっている。

 「保存部分の再検討が名ばかりにならないか心配」と話すのは、日本建築家協会近畿支部の橋本健治・保存再生部会長。

 橋本部会長は、局舎を「重要文化財の水準をはるかに超えている」とした上で、「大阪の玄関口からシンボルが消え、大阪駅前がただの街並みになる」と話す。

 さらに「老朽化が理由に挙げているが、頻繁に改修工事をしており耐久性は十分なはず。また局舎全体を移築する工法も可能だ」と指摘。東京のように世論が高まることが全体保全のカギだとしており、「地元から保存運動を盛り上げていきたい」と話している。

【写真説明】保存議論が持ち上がるなか移転先で営業を開始した大阪中央郵便局=大阪市北区(竹川禎一郎撮影)

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