きょうは憲法記念日。1947年5月3日に憲法が施行されてから62年が経過した。前文に明記された恒久平和の理念をあらためてかみしめるとともに、形骸(けいがい)化させることのないよう決意を新たにしたい。
9条1項は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたっている。
沖縄は去る大戦で多数の住民を巻き込んだ地上戦が行われ、20万人余が犠牲になった。
戦争の惨劇を二度と繰り返さないためには、9条を堅持することが不可欠だ。
骨抜きは自殺行為
わが国の憲法の際立った特徴は9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記し、戦力の不保持にまで踏み込んでいる点だ。
太平洋戦争へと突き進んだ軍国主義への反省から生まれた不戦の誓いと言っていい。この大切な条文を、政府が拡大解釈し続けていることは、極めて危険な動きだ。
一般に「戦力」といえば、戦争を遂行する力を意味し、兵力や兵器を指すはずだ。ところが政府見解による戦力とは「自衛のための必要最小限度を超えるもの」であり、自衛隊は戦力に当たらない。
日本の国防費の規模は世界有数で、優れた対空戦闘能力を備えたイージス艦や高性能の戦闘機を保有している。「自衛のための必要最小限度」のレベルはとっくに超えているだろう。だが「最小限度」の範囲が明確でないため、状況に応じていくらでも装備を増強できるのが実情だ。
自衛隊の主要な任務は日本の防衛だが、91年のペルシャ湾での機雷除去以来、海外活動が拡大の一途をたどり、戦時下のイラクなどにも派遣された。
ソマリア沖の海賊を取り締まるため随時自衛隊派遣を可能にする海賊対処法案も先月23日、衆院を通過した。海外では認められていなかった武器使用を一部容認する内容だ。国の最高法規である憲法を骨抜きにしかねない法律と言わざるを得ない。海賊対策を名目にして、自衛隊が武力を行使できる機会を広げたいという政府側の思惑が透けて見える。
憲法9条の精神をこれ以上ないがしろにすることは自殺行為にも等しく、断じて容認できない。
衆参両院の憲法調査会は2005年4月、憲法改正の必要性を打ち出した最終報告書を自民、民主、公明3党の賛成多数で議決した。
自民党が同年10月に決定した新憲法草案は、環境権などの新たな権利を盛り込む一方で、9条2項を削除し、首相を最高指揮者とする自衛軍の保持を明記している。
衆院選で民意問え
憲法改正に必要な国民の承認を得るための投票制度を定めた国民投票法は来年5月に施行され、これまで凍結されていた改憲原案の提出や審査が可能になる。
年内に実施される衆院選では、憲法改正の是非に関する議論を避けて通るわけにはいかない。
各党は、憲法に対する姿勢をマニフェスト(政権公約)に明示し、民意を問うべきだ。
自民党は新憲法草案を05年に作成した際、集団的自衛権の行使を明文化しなかったものの「自衛権に含まれる」と解釈し、容認する姿勢を示した。
麻生太郎首相は昨年9月、容認へ向け憲法解釈の変更を積極的に検討していく考えを記者団に対し明らかにしている。
集団的自衛権は、日本への直接攻撃がない場合でも同盟国など密接な関係にある外国への攻撃を実力で阻止する権利だ。政府は、憲法解釈上、行使できないとの立場を取ってきた。
これを認めてしまえば、同盟関係にある米国が攻撃された場合に自衛隊が迎撃・参戦する事態が予想される。戦争放棄をうたった憲法の趣旨に反することは明らかだ。
世界に誇るべき平和憲法なのに、時の為政者によって恣意(しい)的に解釈がねじ曲げられたのではたまったものではない。
全国の米軍専用施設面積の4分の3が集中する沖縄では、基地から派生する事件、事故、騒音などで、県民の平和的生存権が脅かされている。沖縄から平和憲法の理念を訴え、問い直す必要がある。
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