【カイロ和田浩明】イランのアフマディネジャド大統領が反イスラエル演説を20日行った国連の世界人種差別撤廃会議の再検討会議を、主要アラブ・メディアは翌日の朝刊1面で報じたり、一部生中継するなど大きく扱い、関心の高さを見せた。ただ、焦点は欧米諸国の演説への反発で、同大統領の発言内容は淡々と伝えた。イスラエル批判に暗に賛同するものの、過激なスタンドプレーを行うイランとは距離感を保とうとしているようだ。
サウジアラビア系の汎アラブ紙「アッシャルク・アルアウサト」は1面に、アフマディネジャド演説に抗議して退場する欧州諸国代表の大きな写真を掲載。「アフマディネジャドに国際的批判」とのメーン記事では、西側の批判的視点を紹介。パレスチナ自治区を実効支配し、イランの支援を受けるイスラム原理主義組織ハマスの会議欠席国への不満も報じた。
論説では「アラブ世界でのイランの地位強化を目指した演説」と指摘、「世界のイスラエル支持を強めただけ」と批判した。エジプトの政府系紙「アルアハラム」も、1面記事の見出しで潘基文(バンギムン)事務総長の「イスラム憎悪は人種差別」との発言を取り上げた。内容の柱はアフマディネジャド大統領の発言への欧米の反発だ。論説で同会議不参加や退場を批判はしたが、大統領への言及はなかった。
演説を20日に生中継したカタールの衛星テレビ局アルジャジーラの英文電子版は、「パレスチナを占領する残酷で抑圧的な人種差別政権」などの同大統領のイスラエル批判を紹介。「議場に残った各国代表からは喝采(かっさい)も上がった」などと報じた。しかし、欧米や国連からの反発や批判にも詳しく言及した。
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20日のアフマディネジャド・イラン大統領の演説の主な内容は次の通り。
人種差別的な国家を設立するため、パレスチナの占領地に欧州や米国などから移民が送られた。欧州での悲惨な人種差別の代償として、パレスチナに最も残酷で抑圧的な人種差別的な政権が作られた。パレスチナ自治区ガザ地区での市民への攻撃や暴力、爆撃を世界の目覚めた市民が非難している一方で、多くの西側諸国と米国が人種差別的な大量虐殺の加害者を擁護していることは全く残念だ。
毎日新聞 2009年4月22日 東京朝刊