【ジュネーブ澤田克己】イランのアフマディネジャド大統領が20日に開幕した国連の世界人種差別撤廃会議の再検討会議で反イスラエル演説をした問題で、国連の潘基文(バンギムン)事務総長は同日、「(国連が)イラン大統領によって告発や分裂、扇動の場として使われたことを非難する」と述べた。国連欧州本部で会議出席後に会見した。
事務総長が、加盟国首脳を「非難」するのは極めて異例。最終日に採択予定の「成果文書」の内容を巡り、反イスラエル的だとして会議をボイコットした米国やドイツ、また、会議に出席したもののイラン大統領の演説途中に抗議して退席した英国やフランスなど欧米諸国を強く意識したようだ。
事務総長はこの日午前にアフマディネジャド大統領と会談した際、会議の重要性などを強調していたという。それにもかかわらず、大統領がこの直後に反イスラエル演説を行ったことから、事務総長は「(演説は)会議が達成しようとしているものと正反対だ。人種問題に関する建設的な解決策の構築を極めて困難にした」と強い口調で語った。
事務総長に同席したピレイ国連人権高等弁務官も「国連は、政治的スタンドプレーの場ではない」と、アフマディネジャド大統領を強く非難。一方で、「こうした場での最適の対処法は、反論し、相手の間違いを正すことであり、議場から退出したり、ボイコットすることではない」とも述べ、欧米諸国の対応にも苦言を呈した。
毎日新聞 2009年4月21日 東京夕刊