熊本県産山村に建設中の大蘇ダムが地盤の水漏れで計画通り貯水できず農業用水の供給が遅れている問題で、農林水産省は15日、漏水の実態を把握するため、5月末からダム底の地盤調査を実施することを明らかにした。漏水がひどい場所をアスファルトで覆い改修する考え。改修が必要な面積が広範囲に及ぶ場合は費用が膨大になるため、ダムからの給水量を減らし、別の水源を確保することも検討する。秋までに対策をまとめる。
同ダム(総貯水量430万トン)は2005年3月に堤防が完成し、水をためる湛水(たんすい)試験中。これまでの試験で、想定の2-16倍に当たる1日5000-4万トンが地盤に浸透し、今のままでは、計画した2160ヘクタールの約6割の1360ヘクタールにしか農業用水を供給できないことが分かった。
同省は、試験的にためた150万トンの水を4月末から抜き、ダムをほぼ空にした上で、5月末に地盤調査に着手する。漏水の原因は、火山灰が堆積(たいせき)し水を通しやすい地質にあるとみられ、ダム底全体の補強が必要になる可能性もある。改修工事は国の直轄事業で地元負担が生じるため、同省は「改修を断念せざるを得ないケースもあり得る」としている。
その場合、近くの玉来川から同ダムへの取水を増やす方法や、同ダムの約20キロ南にある熊本県高森町の大谷ダムの水を一部活用することも検討する。
●欠陥認めて住民に謝罪 農水副大臣
大蘇ダムの問題で、近藤基彦・農林水産副大臣は15日、最大受益地である大分県竹田市での説明会で、集まった受益農家など約300人に対し「大蘇ダムは底の抜けたダム。迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪した。
=2009/04/16付 西日本新聞朝刊=