思いやりの大切さを書いた本ではありましたが、関係者にディズニーファンや著者、出版社を思いやる気持ちがあれば、このような事態になることはなかったものと考えます。
私がこの本で伝えたかったことは思いやりの気持ちの大切さです。
http://gpscompany.blogdehp.ne.jp/article/13444273.html
ですから、エピソードの選定は思いやりの気持ちを育むものを中心に選びました。サンクチュアリ出版様と当社で長きに渡って集めたエピソードに私はすべて目を通し、信用できるエピソードであるのかを、一つ一つ丁寧に検証しました。
サンクチュアリ出版様が集めたエピソードの中には「障害をお持ちのゲストを背負ってビックサンダー・マウンテンに乗せた」というものもありました。
サンクチュアリ出版の編集担当者は、このエピソードを載せたいと許可を求めてきましたが、私は「マニュアル違反であり、絶対にあり得ないこと」と許可しませんでした。
シンデレラ城ミステリーツアーのエピソードも、キャストとゲストの会話内容もかなり変更しました。キャストが言わない言葉が含まれていたからです。
サイン帳を無くしたエピソードも不自然な所はカットしました。例えば「キャストが自費でサイン帳を購入した」という一文もありました。これも、考えられない手順です。
両手が無いゲストがビックサンダー・マウンテンに乗れなかったというエピソードでは、私も「この対応は間違っている」と反省し、オリエンタルランドの担当者に今もこの手順なのかを尋ねました。すると、私が退職後にコメントに著したような手順に変更されていました。そして、その子を探してほしい、というメッセージを伝えました。
私は、東京ディズニーランドで唯一人の「グランドスラム・スーパーバイザー」と呼ばれていました。すべてのアトラクションエリアとゲストサービス施設のスーパーバイザーを経験したからです。
したがって、エピソードの信憑性の判定には自信を持っていました。「このようなエピソードは五万とある」「このエピソードは掲載しない方が無難である」というのが、私の取った姿勢です。
読売新聞が問題とした「キャラクターがゲストを励ます」エピソードも、当り前に行うドナルドの「仕事」です。
2007年の障害者週間に天皇、皇后両陛下は、オリエンタルランドの子会社をご訪問されました。
ドナルドダックの身長を考えてみてください。ドナルドが障害をお持ちのゲストを励ますのには、このような意味もあるのです。
私は、ディズニーランドにはたくさんの障害をお持ちの方が働いている事実を知っています。それだけに、このエピソードは100%入れたい、そう思い採用したものなのです。
天皇、皇后両陛下がご訪問されたご様子はこちらから
http://www.olc.co.jp/news_parts/20071221_01.pdf
両陛下に障害をお持ちの従業員に対して「がんばってください」など、多くの励ましのお言葉を頂戴いたしましたこともあり、「最後のパレード」には障害をお持ちのゲストとの交流の話が多く採用されることになりました。
サンクチュアリ出版様にも今回の報道がなされた後に、両陛下のご訪問の件を伝えました。
著作権者も世間も誠意を尽くせば分かってくれる。ディズニーランドでは「サービスの復旧」と言いますが、少々の手続き上のミスがあってもきっと許していただける、私はそう信じていました。
サンクチュアリ出版様との出版契約には、日本ユニセフへ総売り上げの3%を寄付することになっています。それでも私は、この本の印税収入から、私にしかできない「障がい者木工」の普及などに寄付等を惜しまないつもりでした。
(手前みそになりますが、東京都唯一の国宝である東村山市の正福寺の地蔵祭も、私が知的障がい者施設への木工指導を行わなければ開催できませんでした。)
http://www.shoukoukai.or.jp/profile/jizoumaturi.html
このように、「最後のパレード」は、私が障害をお持ちの方々と深く関わってきたことにより誕生した本なのです。天皇、皇后両陛下を悲しませる結果になることだけは避けなければいけない。そう考え、これからも世間のバッシングに負けないよう説明責任を果たしていきます。
以上、この本は、私が直接知っているエピソード、ディズニーランド時代の友人等から聞いたエピソード、そして、インターネット上のサイトで見つけたエピソードなどを紹介し、読者に「そういうことだったのか」と分かってもらえるよう、エピソード後に「スーパーバイザーとしての解説」を入れたものです。
科学の「科」とは、本来「分ける」ということです。エピソードと私のコメントを分けて考えれば、私がオリジナルを創作した訳ではないことを容易に理解していただけると確信しています。