2008年06月09日

秋葉原通り魔事件の原因を探る

 

犠牲になられた方のご冥福を心からお祈りいたします。誰もが「家族は、友人は含まれていないか」と心配されたことでしょう。それだけ身近で起こった凶悪犯罪だけに、日本社会全体に与えたショックは大きかったものと思われます。


私はこのような事件、事故が発生した場合、なるべく早く反応し、自分の見方をブログに記すようにしています。その理由ですが、それはマスメディアの情報操作が怖いからです。六本木ヒルズ回転扉死亡事故後もそうであったように、なるべく事件の真因にたどり着かせたくないという人たちが水面下で暗躍し、世論を「関係者にとって都合の良い方向」へ誘導していく可能性を否定できないからです。


私は、この問題の真因を「労働者と派遣会社の関係に起因するもの」と捉えています。労使間のコミュニケーションがうまくとれていなかったことが、この青年を追い詰め、犯行に及ばせたものと考えています。


もちろん、犯人を擁護するつもりは全くありません。派遣会社や働いていた工場にこの事件を引き起こした責任があるとも思っていません。
しかし、です。これらの企業がホスピタリティ経営をめざし、労使やステークホルダー間でのWIN―WINの関係が保たれていれば、決してこんなことにはならなかったものと思うのです。


-----------------------------
<秋葉原通り魔>容疑者、解雇と誤解?工場「つなぎがない」と騒ぐ  毎日新聞より引用

派遣社員を6月末で200人から50人に減らす計画があったが、加藤容疑者は、自分が対象ではないことを派遣会社から知らされていたという。

 一方で、加藤容疑者は5日の始業直前の午前6時ごろ「自分のつなぎ(作業着)がない」と大声を出して騒いだため、同僚がリーダーに報告。リーダーが駆けつけたときには、姿を消していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080609-00000011-maiall-soci
-----------------------------


普通に読めば、誤解したとも受け取れますが、パート・アルバイト社員を戦力化してきたプロの見方は全く違います。
「派遣会社からの情報は加藤容疑者には伝わっていなかった」と読み取れるのです。厳しい言い方をすれば、派遣会社の担当者は加藤容疑者に「伝えなかった」と言っても過言ではありません。


私は講演や研修で必ず「伝えると伝わるは180度違う」と話しています。伝えるは「ボールを投げた」だけであり、相手が「ボールを受け取った」ことにより初めて「伝わった」と言えるのです。お分かりでしょう、派遣会社の担当者が加藤容疑者に誤解を与えたということは、正しい情報を「伝えなかった」ということと同じなのです。


マスメディアの記者やレポーターは、警察や関係者の発表を鵜呑みにします。疑ってみる能力も、情報を分析する能力も持ち合わせていません。派遣会社の担当者が、正しい情報が「伝わらなかった」ことが事件にどのように影響を与えたのか、きっと明らかにされることはないでしょう。(加藤容疑者が解雇される150人に含まれていなかったことが真実なのか、否かも明らかにはならないでしょう。)
反対に、誤解したのは労働者側の加藤容疑者の問題として片付けられるに違いありません。私はそのように推察します。


繰り返しますが、私は犯人を擁護するつもりはありません。当たり前ですが、何人(なにびと)にも人を殺める権利などありません。


それでも、このように事件の背景を探っているのは、このままでは同様な事件が再発する可能性があるからです。以前にこのブログで岡山駅の突き落とし事件を取り上げました。栃木の無差別殺傷事件は記憶に新しいところです。偶然なのか、それとも計画的なのかは分かりませんが、今回の事件は、大阪の池田小で起きた無差別殺人事件と同じ日に起きました。


「どうにかしないと」と多くの人々が危惧しているように、このままでは同様の事件は再発します。私は「どうにかする」その答えは、個々の会社のホスピタリティ経営への転換しかないと考えています。


ホスピタリティ経営の要諦は「絶対にやってはいけないこと」を明確化することです。ディズニー・テーマパークの「絶対にやってはいけないこと」は事故や不祥事、「悪い体験」により顧客や従業員、ステークホルダーを不幸にすることであり、不満を持たせることです。同様に、すべての会社の「やってはいけないこと」も顧客や従業員、ステークホルダーを不幸にすることであり、不満を持たせることです。


特に大切なことは、従業員満足の向上です。これも当たり前のことですが、不満を抱えた従業員が「良い仕事」をする訳がありません。顧客や経営者を満足させる仕事をする訳がありません。


今回の事件の真の原因は、労働者であった加藤容疑者の会社や社会への「不満」であると思います。派遣労働者という夢の持てない労働形態が生む若者の「絶望感」が社会を覆っています。老若男女を問わず働き手を大切にする社会への再構築だけが日本経済のダイナミズムを復活させます。そのためには、全ての企業がホスピタリティ経営への転換を図ること、このことが日本社会を安定させる「出発点」であるのです。私はそう信じて疑いません。


7名の尊い命が奪われました。代償が大きすぎますが、この事件が日本社会に希望ある未来を創りだす、一つのきっかけになることを願わざるを得ません。

この記事へのコメント
この記事へのコメントをご記入ください。
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

(ブログ管理者が承認したコメントのみ表示されます)
この記事へのトラックバックURL
http://www.blogdehp.net/tb/13282369
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
(当記事へのリンクを含まないトラックバックは受信されません。)