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26年後に殺害遺体、賠償4200万円確定 最高裁

2009年4月28日21時7分

 東京都足立区で78年に小学校教諭の石川千佳子さん(当時29)が殺害され、26年後に遺体が見つかった事件で、時効成立後に殺害を自首した男(73)に対して遺族が損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が28日あった。最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は、不法行為から20年を経過すると賠償請求権が消滅する「除斥期間」のルールを例外的に適用せず、男の上告を棄却した。約4200万円の賠償を命じた二審・東京高裁判決が確定した。

 最高裁が除斥期間の例外を認めたのは、予防接種が原因で重い心身障害になったことをめぐる国家賠償訴訟の判決(98年)に次いで2例目。犯人が遺体を隠し、遺族が死亡の事実すら知ることができなかった今回のようなケースでは、被害者の権利が重視されることを示した判断といえる。除斥期間も含めた「時効」のありかたを見直そうとする民法改正論議にも影響を与えそうだ。

 遺族の提訴は殺害から27年後の05年で、除斥期間を過ぎていたことから、ルール通りならば請求が認められることはない。ただ、第三小法廷は、男が石川さんの遺体を自宅の床下に埋めて隠し続けたため、相続人が確定しないまま20年が過ぎた、と指摘。相続人が賠償請求権を行使できない一方で、その原因をつくった加害者が責任を免れるのは「著しく正義・公平の理念に反する」と述べ、このような場合には除斥期間の例外を認めるべきだとした。

 判決によると、男は94年ごろに自宅が区画整理事業の区域にかかって明け渡しを求められたが、遺体の発見をおそれて拒否。最終的に立ち退きを余儀なくされた04年に警察に自首したが、刑事訴訟法の時効が成立していたため起訴されなかった。(中井大助)

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